2011年3月2日水曜日

「NO1エコノミストが書いた世界一わかりやすい金利の本」を読んで

No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい金利の本
No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい金利の本

紀伊国屋をぶらついていたときに金融関係の棚にこの本が山積みになっていたのでパラパラめくっていたら結構分かりやすそうだったため買ってみた。上野泰也さんはこの本を読むまでは知らなかったけど業界ではかなり有名なようだ。6年連続アナリストランキング1位ってたぶんそうとうすごいよね。でもこのランキングってごうやって決まるのかな。USTでは高橋洋一さんと対談していたし,最近では結構有名になりつつあるような気がする。
すごくロジカルで落ちつた語り口で理路整然と語られている姿をUstで拝見したことがとても印象的である。
ところで,勝間和代さんが言ってだんだけど、アナリストってみんなメディアトレーニング(テレビに出る際のしゃべり方の練習)を受けるらしい。だからみんな機械みたいに丁寧にしゃべっていて凄く整っている.ニコ生とかUSTとかがはやることでこういったトレーニングも特に必要なくなるかも。リアルタイムでみんなしゃべりたいことを一気にしゃべる。高橋洋一さんとかはほんとにそんな感じ。
それでは本題に。印象に残った部分と要約・抜粋を以下にレビュー。

■住宅ローンを選びお金の運用が上手に
金利の変動の背景が分かれば日本の景気や金利の動きを予想でき、あなたのビジネスや資産運用において的確な判断が下せるようになってくる。住宅ローン・金融商品選びにおいて金利の知識が生きる。住宅ローンの金利支払いを低く抑えられたり、数多い金融商品のなかから自分にとって有利なものを選ぶことができるようになる。
金利の知識は、ビジネスにおいても大いに役に立つ。銀行や証券会社などに金融機関に勤める人、財務・経理を担当するする人はもちろん一般のビジネスパーソンにとっても大切である。
景気・物価・為替市場・株式市場・日本銀行の金融政策・政府の財政政策などの現状と将来の見通しである。市場の金利動向を読み解くことは今後日本経済がどうなるかを知ることにもつながる。
「金利が分かれば経済の仕組みが分かる」というけどその意味を解説してくれた。景気変動や経済政策国の政治動向すべてに相互間で影響しあうのだ。だからほんとに大切。

■金利は上がると利払い負担が増えて企業が苦しむ
・企業は銀行からお金を借りて金利を支払っているので金利の上下は企業にさまざまな影響を及ぼしている。まず金利が上昇したときは利払い負担(金利支払いの負担)が増えて企業を苦しめる。企業はお金を借りていれば利息を支払う(支払利息)。お金を貸したり投資したりしていれば利息を受け取る(受取利息)。つまり、金利上昇はとくに中小企業を苦しめる。
優良企業は社内に内部留保というお金をたくさん貯めているため、銀行からお金を借りる必要がなくなる。銀行借り入れや社債発行を一切せずに、資本金と内部留保金をを使って経営すること無借金経営という。実質的には無借金の企業は東京証券取引所一部で数多く見られ、トヨタ自動車や任天堂、パナソニック、キャノン、武田薬品工業などが代表的である。
中小企業は金利の上げ下げで一喜一憂しなければならない。そもそも優良企業って無借金経営できるから巨額の資金調達

■長期金利と景気は連動する
・長期金利市場の「長期金利」は、その時々の日本銀行の金融政策の決定の影響も受けるがそれ以上に、将来の経済の見通しで決まる傾向が強くなる。
・具体的には、将来の景気や物価の動向など複数の経済要因の見通しで動くということである。よって、長期金利将来の変化先取りする性質があると言える。
・金利の動きを長期で見ると、経済成長と密接な関係がある。経済成長はGDP成長率で表す。まずGDPとは一定期間に国内で新たにつくられたモノ・サービスの付加価値の合計額のことである。長期金利経済の高度成長には高く低成長期には低くなることがわかる。
景気を観測する上でとにかく大切なものが日経平均と長期金利である。

■インターバンク市場とオープンバンク市場
短期金利市場には、インターバンク市場とオープンバンク市場がある。インターバンク市場とは銀行や証券会社などの金融機関だけが参加できる市場であり金融機関同士がお金を出し合う。参加者は銀行のほか信用金庫や証券会社、保険会社、短資会社である。オープンバンク市場とは、銀行や証券会社の他に商社などの大手事業法人地方自治体などが参加している。インターバンク市場との大きな違いは、金融機関以外も参加できるということになる。
・実は市場とは言っても株取引が行われるまで東京証券取引所などのようにどこか建物に取引所があるわけではない。電話や専用端末を使ってお金をやりとりするバーチャルな市場なのである。それらがつながったネットワーク全体を市場と呼んでいる。
・短期金融市場は、当事者間で直接取引する「相対取引」である。お金の借り手と貸し手の双方が納得すれば、どんな金利でも取引が成立する。
インターバンクやオープンバンクって見たことがないから想像しずらい。バーチャルな市場で売り買いしているからもちろん見ることができない。最初勉強したときはいまいち腑に落ちなかったけどなんとなく分かってきた。短期金利市場はすごく重要な存在は分かる。


■規制緩和でどの銀行の金利も同じだった
・現在の日本の金利は需給バランスで決まる自由金利である。しかし1980年代までの日本の金利は政府・日本銀行が決める規制金利だった。臨時金利調整法という法律で金融機関の預金・貸出金利を政府や日銀が決めていた。
・当時の金融市場は未発達であり、銀行の資金調達は日銀に依存する割合が高かった。公定歩合は銀行の資金調達コストの基準となっていてどの銀行も預金・貸出金利は同じだった。
・戦後、日本は経済復興のためにお金を日本国中に行き渡らせる金融システムをつくった。規制金利によって銀行間競争をなくし、銀行を倒産させない護送船団行政といわれるシステムである。
戦後に策定された護送船団行政や規制金利時代の歴史を再確認できる.

1994年には預金金利がすべて自由に
1970年の後半に日本に金融自由化の波がやってきた。そのきっかけは、国債大量発行である。1973年の1次オイルショック(石油価格の高騰)で日本は深刻な不況に陥り税収が激しく落ち込んだ。そこで政府は税収不足を穴埋めするため、国債を大量発行してお金を確保しようとしている。
19794月銀行が国債を流通市場で転売価格は需給バランスで決まるようになった。また、コール市場などの短期金融市場の金利自由化も進み日銀は金融政策を徐々に公開市場操作へと切り替えていくこととなった。
金融自由化はしたもののそんなに金融業界って変わっただろうか。見違えるごどは変わっていないはず。

■金融危機でFRBがとった政策・今後のFRBの出方
FRB議長は経済学者出身のバーナンキでありFRBの任務は物価の安定と最大雇用の二つである。逆にECBなどは、物価の安定のみに力を入れることが法律で決められている。FRBの権限のうちプライマリークレジット金利の決定と銀行以外へ緊急貸出が注目されている。
米国の通貨ドルは世界中の通貨の中でも信頼度が高く、世界中で使われている基軸通貨である。金融政策を通じてドルの命運を握っているFRBの出方しだいで、世界経済は良くも悪くもいいっても過言ではない。
・米国で住宅バブルとクレジットバブルが崩壊してからさほど時間がたっていない。米国経済はまだ治療期間あるいは療養期間にあると言って良い。そうした状況の中でFRBが無理に利上げして米国経済の回復の動きを遅らせてしまうと世界経済全体大きな悪影響が及びかねない。米国の金利の動きは為替相場を経由して日本の金利にも強い影響を与えている。
リーマンショックの後にFRBがとった金融政策の流れを分かりやすく解説。ドルは基軸通貨であることからFRBの出方で世界経済は大きく変わるのだ。ところでバーナンキとかグリーンスパンとかルービンとかガイドナーなんかアメリカの金融セクターで働くトップって全世界で有名になるし注目を受ける。日本はどうかというと・・・

■国債暴落説を招くシナリオ
・日本円は、基軸通貨ではない。次に、日本国債は金融危機が起こったときにリスクを避けるために世界のマネーが流入する投資対象でもない。つまり米国債と違って日本国債マネーの受け皿となるには不十分な投資対象であると言える。
日本経済は(1)人口減少・少子高齢化に進行、(2)慢性的なデフレ、という米国にはない2重苦が日本の財政再建を難しくしている。シナリオとしたは二つが考えられる。
(1)キャピタルフライトの発生:日本の個人投資家が円建ての記入資産で資金運用するのをやめて外貨建ての金融資産で資金運用する傾向(キャピタルフライト)が強まったとき国債は暴落する。(2)政府の借金増加による資金繰り危機の発生日本の個人投資家が円建ての金融資産を中心に資金運用する傾向は基本的には変わらない。やがて国債・地方債が大量増発されて政府の借金が増え続けるとついにその額が家計金融資産(約1400兆円)を中心とする国内マネーの額を上回ってしまう。すると、海外マネーが国債を大量に買ってくれないと、国の資金繰りが成り立たなくなる。このとき、国債は暴落する。
国債暴落のシナリオが二つの観点から語られている。この手の議論は昨年から竹中さんとか榊原さんとかがいろんな本に書かかれている。前読んだ本には個人投資家よりも機関投資家の方が圧倒的に影響力が強いんだかその辺は普通にコントロールできる。だからまだまた国債は発行できるし,すぐに暴落なんてありえないとう内容だった。実際は結構深刻だろう。

■英国BOEのインフレターゲティング
・英国は通貨ユーロは導入せず、自国通貨ポンドを手放していない。英国は独自の金融政策を行っている。英国の中央銀行はイングランド銀行で設立は1694である。BOEは戦後長く財務省の付属機関であり、独自の政策運営を行っていない。
・しかし1997年に金融政策の大改革が実施され、禁輸政策の決定権は財務省からBOEに移されて独立した機関となった。
BOE1992インフレ率を政策目標とするインフレターゲティングを採用している。政府が定めるインフレ率の目標(現在2%)の達成を目指して政策の運営を行っている。英国の主要政策金利はバンクレートであり2010年には6月現在で0.5である。バンクレートとは中央銀行が一般の銀行に貸し出す際の金利のことでいわば公定歩合である。
・2008年後半の世界的な金融危機に直面した英国は日本のバブル崩壊後の不況やデフレなどを教訓として市場から国債などの債券を購入して資金供給量を増やそうとする量的緩和を行ってきた。20102月に量的緩和措置を休止した時点で買い入れ枠は2000億ポンドにも達している。ただし、今後の景気動向によっては量的緩和措置を再開する可能性もある。
現在我が国でもインフレ目標を設定して金融政策を行うべきだ主張する学者は多くいる。果たしてその効果はどうだろうか?僕は素人だからまるで分からないけど。池田信夫さんのこの前のつぶやきを見ていたら「クルーグマンももうインフレターゲットを主張していない」とあったけど本当なのかな。

【まとめ&感想】
エコノミストランキング1との称号だけあり分かりやすくすばらしい説明だった。かなり勉強になった。書き出しながらいろいろなものが腑に落ちていく感覚があった。内容としてはおそらく金融のセクションでは働いているわけではない社会人向けに分かりやすく書かれたものであり、学生の自分からしてもわかりやすかった。
為替のやつもぜひ読んでみよう!
No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい為替の本

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