2011年2月28日月曜日

「一秒で財務諸表を読む方法」を読んで

「1秒!」で財務諸表を読む方法―仕事に使える会計知識が身につく本
「1秒!」で財務諸表を読む方法―仕事に使える会計知識が身につく本

小宮一慶さんのブレイクした本の一つである。僕もこの本が売れ始めたときは小宮さんの存在を知らなかった.やっと存在を知り注目するようになったのは、ビジネスマンのための「発見力」養成講座 (ディスカヴァー携書)とかあたりまえのことをバカになってちゃんとやるとかが売れ始めたあたりで知り少し興味をもった。この方はやっぱ人間力がすごく長けてる。までもこの本からはそこまで分からないけど...。読んだのは1年くらい前だが、すごく分かり易く会計の素人でも分かる内容だったから思い出してレビュー。
印象に残った部分の要約と感想を以下に.

■外資ファンドが狙う企業の貸借対象表
・日本でもファンドによる企業買収が進みつつある。
・銀行などからの借り入れの間接金融、株式や社債の発行による直接金融についで、第3のファイナンスと呼ばれる。
・スティールパートナーズ、はサッポロHDや明星食品をはじめ、ブルドックソースなどの株式を買い進めた。標的になるポイントは、①自己資本比率が高く、②ROEが低い会社。
・日本の伝統的な企業の多くは、土地による含み益がかなりある。自己資本比率が高く、安定したキャッシュフローを生んでいればなおさら欲しくなる。
・レバレッジとは、てこのことだが、ファイナンスの世界では、「負債」,「有利子負債」のことである。ROEを挙げるとは、ROAを高める。 財務レバレッジを高める。
ハゲタカファンドが日本の企業をかっさらっていたときのトピック。そもそも「ハゲタカ」なんて名前つけちゃうところがおかしいんだよね。資本の論理に従っているだけ。あと単にカルチャーが違うだけだよね。ROEの説明はとても分かり易かった。

■ファンドが儲ける仕組み
・借入金を用いて買収する。これをLBOという。買収された企業がLBOにおける借入れ金を返済することになる。アクティビストと呼ばれるファンドは、10%以上の株式を保有して、ある程度の発言権を持ち企業の配当増額を要求する。
・日清食品のように、ホワイトナイトとして登場し、スティールから高く買ってくれることになれば、ファンドとしてはうれしい。
・十分なパフォーマンスも果たせないまま、嫌な株主は除外して、上場を維持したいなどという身勝手な考え方はおかしい。
最後のフレーズはたしかにそうだな。日本ってとりあえず上場しとけば優良企業でひとつの称号みたいなところがあったらしいけど、最近はどんどんその意味がなくなってきている。

■参入しやすいが儲けがそれほど大きくない卸売業
・右から左や商品を流すのがビジネスの要。工場などの設備は必要としない。オフィスと小額の人件費で十分。参入障壁は低い。机と電話があればできる。売上高から販売商品の仕入れ額を差しいたものを粗利という。粗利率に基本的に低い。これらの業種は、固定費負担が少なく参入が比較的容易だが損益分岐点売上高が高くないのが特徴。
・設備投資型産業は,損益分岐点売上高が高く、また損益分岐点を超えた場合の利益率が高い。流通業は損益分岐点売上高が低くまた、損益分岐点を超えた場合の利益率も低い。
設備投資型産業と流通業の損益構造を固定費と変動費の観点から説明している。実に分かりやすい。

■固定費と変動費
鉄鋼業などは、装置産業であり、固定費が高く、変動費が小さい。卸売業などは、その逆で、固定費はそれほど大きくないにせよ、変動比率が小さい。
・航空機産業のビジネスのポイントは、「増し分増益」と「競争」。
航空機産業は、固定費型産業。会社全体で見れば、変動費型、一機ごとに見れば固定費型。固定費型産業だが、例えば、東京・大阪間一回飛行機を飛ばすとすれば、燃料費や着陸料は何人乗ろうと変わらない。変動費は、毛布や飲料水代程度。
・だからこそ、航空機産業では、まず損益分岐点まで乗客を確保すること。そうしなければ赤字になるから、そのための方法は以下の二つ。(1)普通の運賃で売上高の確保をする。(2)人数は増えるが、割引運賃で損益分岐点売上高を確保する。
・安い航空券がでるのは、「空気を運ぶより人をのせたほうがマシ」ではちょっと説明不足。
JR新幹線も同じ損益構造なのになぜ割引しないのか?
損益分岐点分析が具体的な事例をもとに理解できる。航空機産業とか運輸業とかって基本的に固定費型産業なんだ。だからいかに割りびいてでも人とか物を載せたほうが効率がいい.

■液晶テレビの価格がどんどん下がる理由
直接減価計算の考え方を用いる。
・この理由は、多額の設備投資と競争がポイント。
・設備投資額が販売価格に転嫁される。もちろん生産数量が価格に大きな影響を与える。
競争が競争を生み、生産過剰が供給過剰を引き起こし、余計に価格が下落することになる。いわゆる、合成の誤謬の状態。個別企業では、価格競争力を得るためにコスト削減が大切であり、そのためにできるだけ製品を大量に生産した方が償却負担の関係でコストを引いて製品価格が安くなる。
・世界メーカーが、その思惑で生産規模を拡大すると、供給過剰を生み、競争激化でさらに価格が下落する。その価格下落に対応するために、生産拡大でコスト削減を行う必要が生じる。まさに、悪循環。
個別企業の利益最大化と市場全体の効率性の間にジレンマが発生してしまっている。まさしく合成の誤謬。

■花王が気にしたのはWACC
WACC(加重平均調達コスト)は、負債と純資産の調達コスト。自己資本比率が高くなるほうが、WACCが高くなる。
ROAWACCよりも大きくなくてはならない。
・カネボウ化粧品は、産業再生機構の参加にあったあの混乱期でも安定して収益を上げていた。花王の傘下に入ればもっと収益が上がる。
・貸借対照表からみたカネボウは、ほとんど借入金で買収した理由である。つまり、借入金を増やすことにより金利負担は増えるが自己資本比率を大きく下げることにより、WACC自体が下がる。さらに、時間がたてば、資産が償却してしだいにROAは高まる。
敵対的買収の防衛策になる
(1)   思惑通り利益やROAが上昇すれば株価が上がり、時価総額が上がる。
(2)   カネボウの化粧品部門を取り込むことにより、企業規模が大きくなり結果的に時価総額を大き
くする。時価総額が大きくなると、防衛策になる。
ROEとかWACCとか会計を学びはじめてから最近知ったけどこうゆうツールを使って企業を切り裂いて分析するととてもおもしろい。


SCMについて
・大規模な消費材メーカーは、SCM(サプライチェーンマネジメント)を導入していることが多いと聞く。原材料、部品の生産、デザイン、加工な別々の会社でやっているプロセスをトータルで管理する
・例えば、アパレル業界ではエジプト綿をイタリアで染色しそれを中国の工場で縫製つくるといった具合。この場合大手商社が一括管理している場合が多い品質、在庫、物流、資金、それを支えるシステム管理、意思疎通など、様々な点でノウハウや考察が必要。
最後にSCMについての説明があったので。最近では物流管理が著しいらしくSCMは一つの重要キーワードになるだろう。

【まとめ&感想】
教科書のように1から体系立てて説明するより,こうやって最新のトピックごとに区切って最新のネタを使って説明するのも結構いい。この本は楽しめながら読めた。特に会計や財務の初学者にはもってこいの一冊だと思う。
こちらも必見。
「1秒!」で財務諸表を読む方法【実践編】

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