2011年1月3日月曜日

「日本経済「余命3年」」を読んで

日本経済「余命3年」 <徹底討論>財政危機をどう乗り越えるか
日本経済「余命3年」 <徹底討論>財政危機をどう乗り越えるか

年末実家に帰る列車のなかで一気に読んだ。2~3時間でさっと読んで、結構おもしろかった。
メンバーが強烈。THE郵政民営化の経済学者の竹中さん、NHK出身のアゴラの開設者である経済学者池田信夫さん、「日本の税をどう考える」でおなじみの財政学の専門家である土居さん、今回初めて知ったんだけど日銀出身で社会保障の専門家鈴木さんの対談集である。

IMFが介入する可能性
韓国もギリシャも年金や税制などの改正草案をIMFから提案などの提示を受けたがそのとたんに暴動が起きた。日本でも同じことが起こる可能性はある。
日本は防衛策を講じる策を持っているから大丈夫だけど、毎年審査を受けている。
ギリシャ危機は、ギリシャ国債を買っている金融機関がバランスシートを傷め、金融システム不安が起こるのでは、という懸念に発展した。政府債務残高の問題を解決する方法は、いいかたちで金利をが上昇することである。このような状態になれば、IMFが出てくる可能性は十分ある。

韓国とかギリシャとかアジア通貨危機のときに官僚の汚職とか癒着とか不祥事で無茶苦茶になって国家が破綻状態になったんだね。でも、そのあと10年ぐらいで国で財閥つくってサムスンみたいなサイボーグ企業が出てくるわけだから韓国はそのあとがすごかった。

■国債が暴落する可能性
国債の95%は日本人が買っており、日本の個人金融資産が余っているのだからそれでまかなえる限り大丈夫というのだ。私たち国民は、積極的に国債を選好して買っているのだはなく、銀行に預けているとか、保険として掛けているお金などがあり、それが機関投資家は利益を出すために行動するから愛国心によって損を承知で国債を買い続けることはない
・ギリシャの場合、財務統計を偽っていたことが大きな問題となった。GDP4%程度と発表していた財政赤字が1程度あり、財務残高に統治能力があるのか疑いをかけられることとなった。日本の場合は統計について、そこまでのごまかしはありえないが、いったん不信感が強まればどうなるかは分からない

「絶対こうなる!日本経済」のなかで、国債はまだ発行できるという榊原さんの意見と竹中さんの話からも理解できる内容。国に対する信用の無さが突然のバックラッシュを生むんだな。

■需要と供給を調整するのは価格
市場原理市場メカニズムという言葉が嫌いな人には、「価格を調整する」という言葉を用いて説明する。価格を調整できない状況には不幸なことだと分かる。
・国民にも官僚にも「価格で需要と供給を調整する」という経済学の感覚がなく、「貧しい人を国が援助する」という所得再配分のほうばかりに関心が向いている。保育所が典型であり、納税額に応じて保険料が決まっている。
・そこで大切なのが「支払い意思額」(willing to payの発想。自分で根付けする感覚他の先進国やアジア諸国より劣っているからかもしれない。それでも根つけする能力はあるはずなので、それを生かせばよい。「自分がハッピーになるには自分の欲する価格でモノが得られると良いですね」って話。
・公費がたくさん入っている代わりに、保育所の提供するサービスは金太郎飴みたいな同質の内容イギリスやアメリカでは、かなり高度な教育を行う保育所には大きなニーズがある。10万を払ってでも質のいいものには高く払う。規制緩和により、料金は高いけれど質の高い保育所をつくれば、高齢所得者も負担増に納得ができ、解決の糸口が見つかる

消費者が自ら値段をつける感覚っていうかそういうのがすごく大切なんかな。いいもの質の良いものだったら高い金を払ってでも買うってのもありなんだ。公的なサービスだと均一すぎるからだめって話。日本も豊かになったんだから、教育にももっといろんな階層ができてもいいよね。

■ベーシックインカムの現実性
・今の若者達の反応を見ると、ベーシックインカムへの関心が高まっている。これは最低限の生活を送れるだけの現金を政府が支給するというもの。自分の達の払う税金や保険料が全部年寄りに取られるという被害者意識が強い。年金制度を廃止して、ベーシックインカムにてくれという意見が高まっている。
・とくに、貧富の格差に目くじらを立てる割には、高齢者への手厚い補償を通じていまある、格差が親から子に遺伝することは無頓着である。十分資力がある高齢者にも低所得の高齢者にも、のべつまくなしに社会保障を与えれば、多くの資産を持っている高齢者は年金を全部貯金し、そのまま子に相続させることにつながる。これは、格差の固定化につながる大問題だが議論には上がらない。


ベーシックインカムの話は、山崎元さんとか東さんホリエモンがガンガン主張していて本当に実現すれば税制や社会保障の概念を覆し大きな再構築につながると思う。まだまだハードルは高そう。

■法人税は20%台が適切
グローバル化の問題があり、さずがに財務省の主計局もだんだん分かってきている。高所得者に対する最高税率と似ている高い税率を課しても結局海外に逃げられるだけ。自由な経済活動が保証されている以上、合法的に逃げられても追いかけようがない。
要は恣意的に逃げること考えられるより、日本で税金を払ったほうがマシだと考えられる範囲で税率を設定するのがベスト。
・要は、恣意的に逃げることを考えることよりも日本で税金を払ったほうがマシと思える。これは、ヨーロッパ諸国の税制に関する基本的な考え方でもある。コンサルタントや節税の専門家に高い相談料を払って税逃れされるような高い税率を維持するより、高い税率を維持するより、税率を下げて税金が国庫に入るようにしたほうが良い

「経済成長」で解決される問題がやまほどある。経済学者の間では、法人税の減税と消費税の増税をパッケージにして行う。経済成長してないのに、消費税をかますとさらに景気が悪くなる可能性があるってことだな。消費税って取っぱぐれがないし、薄く広く取れる

■個人主義に根差した制度設計
・日本でサンデルがうけるのは、個人主義やリバタリアンを批判する議論で、日本人にとって受け入れやすいから。サンデルは、本質的な問題は、所得格差ではなく、人々の価値観を支えていたコミニティが崩壊し、社会が個人に分解していることだというサンデルの指摘である。
・国家が全国的な取り組みとしてやったときはそれにのるが、それがなくなると自発的コミュニティのなかからソーシャルキャピタルが生まれてくる。厚生労働省では、これを「地域包括ケア」と呼び、制度化しようとしている。コミュニティの自発的取り組みを厚生労働省が補助金と規制で縛るのはナンセンス
日銀法を改正して、金融政策に対する責任をしっかり負わせる物価目標を決め日銀はきっちりそれを達成する。
・長期の話として、成長力を高めることが大切だとされる。財政再建のためになり、すべての問題解決につながる。それには、法人税の引き下げや規制改革が必要で、とくに規制の仕分けをきちんと行わなければならない。教育改革を一体化して、サプライサイドを強くしながら、貧困対策を中心に社会保障対策を行う。高齢者人口が増大するなかで、年金や医療などの制度設計を間違えるととんでもない負担の増大につながる。教育に関しては、教育バウチャーのようなかたちで、競争メカニズムをいれながら強化していく政策が必要。


思想家の東浩紀さんなんかも、個をベースにして再構築すべきだと結構前から言ってる。社会の再設計っていうかそろそろそんな時代がきている気がするな。社会保障とか相続制度、年金制度の再構築の時代が来ている。


【まとめ&感想】
テレビを見なくなって経済・財政・政策の専門書をガンガン読むようになってからは、竹中さんが言ってることは経済学的にはかなりまっとうなんだって思えるようになった。小泉・竹中改革の害悪とかいっていつもテレビで垂れ流していれば洗脳されちゃう。テレビの害悪ってほんとひどいなって思う。
池田信夫さんとかもすごく勢いのある経済学者で、これからの日本を変革できる逸材であるとすごく期待している。榊原さんとの共著である「田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる! 絶対こうなる!日本経済」に続きいい本だった。


カリスマブロガー達の書評も参考に
金融日記:http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51772528.html
著者池田信夫さんブログ:http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51501114.html
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