2010年12月31日金曜日

「絶対こうなる!日本経済」を読んで

田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる! 絶対こうなる!日本経済
田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる! 絶対こうなる!日本経済
小泉内閣で郵政民営化を担当し経済政策の実権を握ったとして活躍した竹中氏と現在の民主党のブレーンであり、財務官僚出身で「ミスター円」こと榊原氏の対談。お互い慶大教授と早大教授としての教員から見た発言もあって結構おもしろい。経済政策、財源問題、農業、医療、教育問題、都市政策や空港整備など議論は多岐に渡っている。
印象に残った部分は以下の通り。

■製造業でM&Aが進まない理由
日本は一業種あたりの企業数が多すぎる。国内の中で消費して、競争して終わっていまっている。韓国は電力会社1社に対し、日本は10社。また、パナソニックとソニーを合わせてもサムスンに届かない。
・M&Aが進まなかったのは、仲介役の金融の力が弱かったのは事実。
・日本の家電業界すべてを統合しても、サムスンの3分の1。コーポレートガバナンスが効いていれば、収益の最大化のために合併が必要であれば、当然進む。企業の株の持ち合いなどでこれは進まなかった。政府がM&A仲介に対して税制上のメリットを与えるのは大切なこと。

M&Aなどファイナンスの視点からの産業再生やイノベーションはかなり遅れてるんではという意見。たしかに大蔵省時代の護送船団行政はすごかったっていうからなあ。 日本独自の風土や企業観があるのはたしかだけどそれにしても遅れているんだろう。

■日本の技術は高く特許数も多いが駄目
・ビジネスモデルに上で、ブラックボックス化するところと、オープン化する部分をうまくすみ分けたうえで、ミックスすることができなかった。
・日本は規格オープン化(モジュール化)にすごく出遅れた。自分のところで全部やろうとする。例えば、デルはCPUはインテル、HDDはウェスタンディジタル、メモリは台湾製、液晶はサムスンなど、徹頭徹尾バラバラでとにかく安く、中国で組み立てる
モジュール化とは、規格のオープン化のことで、裾野が広がる。だから、世界中のいろいろな人がその規格を使いはじめる。PC業界がその特徴で、モジュール化された製品を使い、安くて高性能なPCを組み立てる。
インテルは、ここで肝心なところはブラックボックス化し、高収益をあげている。サムスンは、日本の主要電機メーカーに売る製品があるが、日本は逆に無い。相手から買うばかりだから負ける一方。


PCメーカーを例にビジネスモデルを再考すればこの数十年で何が起こってきたのか分かる。デルやインテルなど生産過程のある部分にすごく特化している。日本はこの部分で大きく遅れをとったんだろう。


■自動車に時代の終焉
・GM、クライスラーの破綻。トヨタの赤字。自動車の時代は失速している。これからは、エンジンも不要。鉄もいらなくなる。電気自動車業界でも、モジュール化が進む。産業構造が大きく変わらざるを得ない。鉄鋼会社、エンジン部品メーカー、それに付随する下請け、新しいビジネスモデルが生まれる。CO2排出量は、20%が自動車産業。極端な話、休耕地全部にソーラーパネルを敷き詰めると、日本の50%の電力がまかなえる。

GMもトヨタも自動車の時代は終わりましたね。。

■国債はまだ発行できるのか?
・国の財政赤字が国債でファイナンスされている。毎年借金が膨らんでいるから、どんどん国債を発行して赤字を埋めている。日本の国債は95%が日本人買っている。機関投資家が不安になって、一気に手放すのを「キャピタルフライト」(資本逃避)という。その可能性は高い。グローバルリートや外債に関する関心が高まるなかで国債のポジションは危なくなりつつある。(竹中)
・日本人といっても、実際に買っているのは、日本の金融機関、保険会社、年金基金である。その三分の二の資本がつぎ込まれている。だからまだ大丈夫。(榊原)


国債論争はずっと前から白熱していた。日本の論点2009でお二人の論争対決があり注目はしていた。機関投資家がもっとも優先するのは顧客の利益であり、愛国心で国債を買い続けることはない、とする竹中さんの意見の方が正しいのかな・・・。

■日本の銀行はリスク管理をやったことがない。
金融はリスク管理業。日本の金融はリスク管理をやったことない。護送船団方式は一番遅いものに合わせて進む。
銀行は不動産がなければお金を貸さない。これはおかしい。中小企業の経営者やその事業に貸出することがその使命ではないのか?日本は、だれもやったことがないことはやらない主義だから。
・日本はバブルの頃に、土地に対する感覚が一度くるってしまった。消費者物価が5倍になる前に、地価が220倍に膨れ上がった。リスクとリターンの関係など考える余地はなかった。

日本の金まわりってここ数十年ずっとおかしかったんだな。絶対お金と土地がはりついていたのもへんなんだな。土地を担保にしないとお金絶対貸さんみたいな。

■発展を阻害する医療・農業・介護の分野での規制
・新しいベンチャーを立ち上げる環境も不十分。ベンチャーキャピタルなどを利用して。
日本の農地法は戦後すぐにつくられたもの。規制や縛りが多すぎる。「自作農がやるのが農業」。いまでも、農民である人が50%いなければ、参入できない。
そこに住んでいる人の半分を雇わなければならない。新規参入を著しく阻んでいる。

農地法の早期改正が望まれている。農地ではそこに住んでいる人を雇用しなくちゃいけないんだあ。何百年前の法律ですかって感じだなあ。

【まとめ&感想】
経済政策のエキスパート二人の議論は白熱し、実におもしろかった。リアルタイムで起こっている日本経済の内容をざっくり理解し、解決策を考えるのにとても良い本だった。
こちらの二冊も必見。
フレンチ・パラドックス
経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)

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