2010年12月24日金曜日

「起業ってこうなんだ!」を読んで

起業ってこうなんだ!どっとこむ
起業ってこうなんだ!どっとこむ


 サイバーエージェントの藤田氏一橋大学教授の米倉氏との対談。まだライブドア事件の前だから、IT業界が一番調子がよかった時期に出版されている。対談形式だから読みやすくサクッと読めてしまった。あんまり、藤田さんに興味を持つことは今までなかったけど、なんか表紙がいい感じだったからついついブックオフで買って読んでしまった。
 経営の現場・実務を踏まえてファイナンスの話・M&A、マネジメントの話などざっくばらんで結構おもしろい。学問としての経営学というよりは「実際現場ではこんな感じよ」ってスタンスの藤田さんの話は良かった。


印象に残ったのは以下の通り。


■総合商社化するネット起業
・ネットのメディアももともと寡占状態だった。サイバーコミニュケーションズは、電通とソフトバンクの共同出資会社している上場会社があった。ところが、ヤフーが他社にも広告を下ろし始めた。ネット業界では、どこかの強い広告代理店が枠を抑えているという構図がほとんど存在しなくなった。利権がまとわりついているとろくなことが無い。
・もともと、利権を抑えることによって、広告代理店の存在や強さを維持しているものは、日本では優秀な電通や博報堂の人材で奇跡的になしえている。
・マーケティングに詳しい人がその会社に一人いれば、メディア戦略は決まる。代理店の役割は無くなり、買付けと広告の製作だけが存在している。ある意味では、電通、博報堂は日本の総合商社に近い、人材力を中心におさえてファイナンスもすれば、クリエイティブもする。


ネット起業でたしかに商社みたいになってる・・・。金融もやれば流通も広告も出版もなんでもいける。あとめちゃくちゃ参入障壁が低いところが強みなんだろうな。

■スタートアップはおもしろい
今こそ、新たな産業フロンティアと雇用を創出するようなスタートアップが望まれている。既存の大企業は「株主重視」という株式市場からのプレッシャーで、そう新しい分野に出てくることが少ない。
・ソフトバンクの孫正義が韓国から持ってきたADSLの技術も技術的には、本命ではなかったが、日本をあっと言う間にブロードバンドの国にした。ISDN地獄の時代は続いていたかもしれない。やってみなければ分からない。
・マザーズやヘラクレスも整備された。ベンチャー企業もIPOだけでなく、売却や合併など実に多様なゴールが見え始めた。フロンティアには、日本で一番頭が良く、根性がある奴に来てほしい。

孫さんのADSLの話は興味深い。今ではもう「光の道」とかもやっているし。これかも期待したい。
ベンチャー市場もライブドア事件後は落ち目があったけど、最近また勢いを取り戻してるんでは・・・?錯覚かな

■ストックオプションってなんだ?
M&A、人的資源、脱カリスマ、モチベーションなど。ベンチャーが抱える問題は大きい。なかでも報酬の配り方は難しい。
ストックオプションで潤うことは良い。あまり前面に出してぎらつくのはよくない。
ストックオプションの期限がきたらやめるかやめないかというのは、良くない。
マネーインセンティブで人を動かすはあんま良くない。組織の和を大切するべき。
・ストックオプションのいいところは、自分が頑張って会社の価値を上げれば自分の資産が増える。


藤田さんがストックオプションを自社でどう活用しているかが分かる本だった。ただし、マネーインセンティブで人を動かすのは良くないという、藤田さんなりの経営思想が良く分かる。

■上場はすべきかどうか?
・上場すれば、資金調達の道も開かれるし、信用力もあがる。不特定多数の株主にみられているという厳しい環境にあれば、会社は恐怖に感じる。当然経営者が責任をもってやれば、上場する必要はない。サントリーなどはおそらくずっと上場しない。
・例えば、ワールドなどのファッションビジネスなどは巨大な資金調達を必要としないし、株式市場に上場に依存する必要はない。ワールドの非上場化は面白い。
・「利益率が低いのは、日本的経営を守るため」(HBSクレイトン・クリステンセン教授)
・日産のカルロス・ゴーンとか、キャノンの御手洗さんはちゃんと短期の利益も出して、有利子負債も削減して、成長プランも書いている。日本的やアメリカ的は関係なく、現代の上場企業の第一責任である。


たしかそこまでいうか(勝間・堀江・ひろゆき)の対談で「一昔に比べて日本で上場するメリットはほとんどなくなった」というくだりを読んだ記憶がある。外資のファンドが暴れているときはMBOで非上場化してしまう企業も多かったように、もう一度上場のメリットとデメリットを再整理する必要があるだろう。

【まとめ&感想】
対談形式だtったので、肩の力を抜いて読めた。すこし前だけどいい本だった。
学者の米倉さんがいい現役経営者のいい引き出しやくになってくれたと思う。
こちらも必見!まだ読んでないけど。最初にハイパーネットの話が出てくるらしい。
渋谷ではたらく社長の告白 (幻冬舎文庫)

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