2010年12月1日水曜日

「生命保険のカラクリ」を読んで

生命保険のカラクリ (文春新書)
生命保険のカラクリ (文春新書)


この本は,就職活動のときに電車の移動時間で読んでいたもの.この時は,さらっとしか読んでいなかっため,今回熟読することにした.
「岩瀬大輔」という名前を初めて知ったのは2年前。「ハーバード大学留学記」というブログを書籍化したものをたまたま本屋で発見し、読んでいたら「なんと情熱的ですがすがしい男なんだ」と尊敬して、そこから注目するようになった。在学中に司法試験に合格して,戦略コンサル畑,投資ファンドを歩んだ後,HBSのMBAで上位5パーセセントの成績で卒業という,エリート中のエリート街道を歩んだ著者.
しかし,ここからがすごい,複数の投資顧問会社の内定を蹴って生保ベンチャーの立ち上げに参入したのだ.あえて自らにリスクをとって,挑戦する試練の道を選択したのだ.企業は,経営戦略においてリスクをとることは,いざ個人のキャリアになると誰もリスクをとろうとしない.しかし,それを自ら体を張って体現しようという男なのだ.岩瀬さんが生保という業界を選んだ理由は以下の3つだそうだ.

①市場が非効率であること.
②市場が非常に巨大であること.
③市場が変革する波が訪れはじめてたこと.

加えて,日生で生保畑34年のMOF担当として,活躍してきた出口社長の「生命保険の共助の精神を再興する」という設立理念に賛同したことがなによりも大きいようだ.
印象の残った部分は,以下の通り.

付加保険料開示の衝撃

・典型的な死亡保険の付加保険料が3割から6とされている。証券仲介や投資信託商品を選ぶ際に必ず手数料が重要な比較対象の指標になるように、生命保険会社も付加保険料の低い会社を選ぶことが大切になるはずである。
生命保険業界において、この付加保険料部分を開示することは、タブーとされてきた。しかしながら、住宅ローンを購入するときも、投資信託の販売においても必ず手数料は開示される。なぜ生命保険業界だけが・・・。

保険料の自由化から新規参入

護送船団行政の特徴は、業態別組織を編成し、銀行局、証券局、保険部それぞれの業態で新規参入を認めないことによってつまり、つぶさないことで預金者、投資家、保険契約者を守ることであった。
・生命保険業界においては、大きな二つの障壁が競争を阻害してきた。ひとつは、参入障壁であり、もうひとつが保険料の許認可制度である。誰がゲームに参入するかも政府が決定して、重要なルールである商品の値段や料率も政府が決めるというものある
・資本主義のもとでは、自由市場下で競争が、行われることで、需用と供給のバランスによって価格が決定し、市場が効率化していく考え方があるはずである。
2008年には、ネット事業の生命保険会社の設立が相次いだ。われらがライフネット生命は、マネックス、三井物産、新生銀行、リクルート、セブンFGなどの異業種を株主に持つ。また、ネット金融グループSBIは、アクサ生命と合同でSBIアクサ生命を立ち上げ営業を開始している。


■米国で初めて加入した医療保険

・アメリカには公的な医療保険制度が存在しない医療保険は民間の保険会社によって提供されている。その結果、低所得者層を中心に、医療保険に加入していない人が約4000万人もいると言われ、大きな社会問題になっている。
・民間の病院は、経営の効率化を求めてキャッシフローの改善策として、保険加入者の治療費未払いをなくすよう、精力的に取り組む。その結果、基本的な権利である「医療を受ける権利」ですら保障されない人々が増えており、経済的な格差が助長されるようになってきた。
これに対し、我が国の公的な健康保険制度は、諸外国の中でも極めて手厚く整備されているものの一つと言える。空気のように存在しているため実感することがない。自己負担にも一定の基準が設けられている。


【まとめ】
日本の生命保険業界がいかに特有で,非効率な市場であったのかをよく理解できた.しかし,その市場規模は非常に巨大であり,「保険料を1%でも下げられれば,何千億円という金額を国民に還元できる」という筆者の熱い思いを感じることができた.マネックス証券の松本大さんにしろ,ライフネット生命の岩瀬大輔さんにしろ本当に優秀な人ほどリスクをとってチャレンジし,公のために資するのだと感じた.岩瀬さんの本は非常に情熱的でモチベーションアップに繋がる.これからも期待したい.こちらも132億円集めたビジネスプラン最近リリース.

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