2010年12月31日金曜日

「絶対こうなる!日本経済」を読んで

田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる! 絶対こうなる!日本経済
田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる! 絶対こうなる!日本経済
小泉内閣で郵政民営化を担当し経済政策の実権を握ったとして活躍した竹中氏と現在の民主党のブレーンであり、財務官僚出身で「ミスター円」こと榊原氏の対談。お互い慶大教授と早大教授としての教員から見た発言もあって結構おもしろい。経済政策、財源問題、農業、医療、教育問題、都市政策や空港整備など議論は多岐に渡っている。
印象に残った部分は以下の通り。

■製造業でM&Aが進まない理由
日本は一業種あたりの企業数が多すぎる。国内の中で消費して、競争して終わっていまっている。韓国は電力会社1社に対し、日本は10社。また、パナソニックとソニーを合わせてもサムスンに届かない。
・M&Aが進まなかったのは、仲介役の金融の力が弱かったのは事実。
・日本の家電業界すべてを統合しても、サムスンの3分の1。コーポレートガバナンスが効いていれば、収益の最大化のために合併が必要であれば、当然進む。企業の株の持ち合いなどでこれは進まなかった。政府がM&A仲介に対して税制上のメリットを与えるのは大切なこと。

M&Aなどファイナンスの視点からの産業再生やイノベーションはかなり遅れてるんではという意見。たしかに大蔵省時代の護送船団行政はすごかったっていうからなあ。 日本独自の風土や企業観があるのはたしかだけどそれにしても遅れているんだろう。

■日本の技術は高く特許数も多いが駄目
・ビジネスモデルに上で、ブラックボックス化するところと、オープン化する部分をうまくすみ分けたうえで、ミックスすることができなかった。
・日本は規格オープン化(モジュール化)にすごく出遅れた。自分のところで全部やろうとする。例えば、デルはCPUはインテル、HDDはウェスタンディジタル、メモリは台湾製、液晶はサムスンなど、徹頭徹尾バラバラでとにかく安く、中国で組み立てる
モジュール化とは、規格のオープン化のことで、裾野が広がる。だから、世界中のいろいろな人がその規格を使いはじめる。PC業界がその特徴で、モジュール化された製品を使い、安くて高性能なPCを組み立てる。
インテルは、ここで肝心なところはブラックボックス化し、高収益をあげている。サムスンは、日本の主要電機メーカーに売る製品があるが、日本は逆に無い。相手から買うばかりだから負ける一方。


PCメーカーを例にビジネスモデルを再考すればこの数十年で何が起こってきたのか分かる。デルやインテルなど生産過程のある部分にすごく特化している。日本はこの部分で大きく遅れをとったんだろう。


■自動車に時代の終焉
・GM、クライスラーの破綻。トヨタの赤字。自動車の時代は失速している。これからは、エンジンも不要。鉄もいらなくなる。電気自動車業界でも、モジュール化が進む。産業構造が大きく変わらざるを得ない。鉄鋼会社、エンジン部品メーカー、それに付随する下請け、新しいビジネスモデルが生まれる。CO2排出量は、20%が自動車産業。極端な話、休耕地全部にソーラーパネルを敷き詰めると、日本の50%の電力がまかなえる。

GMもトヨタも自動車の時代は終わりましたね。。

■国債はまだ発行できるのか?
・国の財政赤字が国債でファイナンスされている。毎年借金が膨らんでいるから、どんどん国債を発行して赤字を埋めている。日本の国債は95%が日本人買っている。機関投資家が不安になって、一気に手放すのを「キャピタルフライト」(資本逃避)という。その可能性は高い。グローバルリートや外債に関する関心が高まるなかで国債のポジションは危なくなりつつある。(竹中)
・日本人といっても、実際に買っているのは、日本の金融機関、保険会社、年金基金である。その三分の二の資本がつぎ込まれている。だからまだ大丈夫。(榊原)


国債論争はずっと前から白熱していた。日本の論点2009でお二人の論争対決があり注目はしていた。機関投資家がもっとも優先するのは顧客の利益であり、愛国心で国債を買い続けることはない、とする竹中さんの意見の方が正しいのかな・・・。

■日本の銀行はリスク管理をやったことがない。
金融はリスク管理業。日本の金融はリスク管理をやったことない。護送船団方式は一番遅いものに合わせて進む。
銀行は不動産がなければお金を貸さない。これはおかしい。中小企業の経営者やその事業に貸出することがその使命ではないのか?日本は、だれもやったことがないことはやらない主義だから。
・日本はバブルの頃に、土地に対する感覚が一度くるってしまった。消費者物価が5倍になる前に、地価が220倍に膨れ上がった。リスクとリターンの関係など考える余地はなかった。

日本の金まわりってここ数十年ずっとおかしかったんだな。絶対お金と土地がはりついていたのもへんなんだな。土地を担保にしないとお金絶対貸さんみたいな。

■発展を阻害する医療・農業・介護の分野での規制
・新しいベンチャーを立ち上げる環境も不十分。ベンチャーキャピタルなどを利用して。
日本の農地法は戦後すぐにつくられたもの。規制や縛りが多すぎる。「自作農がやるのが農業」。いまでも、農民である人が50%いなければ、参入できない。
そこに住んでいる人の半分を雇わなければならない。新規参入を著しく阻んでいる。

農地法の早期改正が望まれている。農地ではそこに住んでいる人を雇用しなくちゃいけないんだあ。何百年前の法律ですかって感じだなあ。

【まとめ&感想】
経済政策のエキスパート二人の議論は白熱し、実におもしろかった。リアルタイムで起こっている日本経済の内容をざっくり理解し、解決策を考えるのにとても良い本だった。
こちらの二冊も必見。
フレンチ・パラドックス
経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)

2010年12月30日木曜日

「突破力」を読んで

田原総一朗責任編集 2時間で人生が変わる! 嫌われることを恐れない突破力! 世間という牢獄から脱出する方法 (2時間で人生が変わる!)
田原総一朗責任編集 2時間で人生が変わる! 嫌われることを恐れない突破力! 世間という牢獄から脱出する方法 (2時間で人生が変わる!)

経済評論家の勝間さんと元ライブドア社長のホリエさんの対談本。出る杭は打たれる。amazonの書評レビューでたたかれまくる勝間さん。現役社長時代はメディアから総バッシングをくらった堀江さん。田原総一郎さんをはさんでのお二人の対談集。
僕が思うに二人とも何かをめちゃくちゃやりすぎてしまった人。やりすぎて人よりもめちゃくちゃすごい結果を出して突き抜けてしまい、目立ってしまった。だから嫌われた。でも、それを突き抜けられる力があるのがこの二人なんだなあ。
印象に残った部分は以下。

■成功の秘訣は情報収集力
・エレベータを待っているほんの5分間でも、iphoneでニュースとツイッターをチェックして、情報収集する。専門家のブログやツイッターやブログのコメントなどいろいろな切り口から情報を把握できる。
・自分から情報収集に積極的に語りかけると人とネットワークができる。本当にそのことが知りたければ情報源にあたりに行く。本省とからでも資料を取り寄せる

1秒も無駄にしない姿勢がすごい。この人たちガチだなって感じ。だからすごいんだと思う。

■木村剛だけがなぜ狙われた?
・日本の金融が国際的にだめなのは、財務省の縛りというか規制が強すぎるから。護送船団方式の流れがまだ残っている、ビックバンによって風向きを変わりかけたが。日本の銀行や証券会社はすぐれた金融商品がつくれない。銀行も新規参入ができない、球団やテレビ局と同じ。つい最近、イーバンクが40年ぶりに銀行の免許を取得した。
・頭のいいひと達が悪いひとたちから搾取している。たとえばJAバンク。農家から預金を集めて、農業のためによりよい使い方をするのが普通(農機具のリースとか)。だが、ほとんどが金融商品の販売に使われている。農林中金にまとわりついた金融を正常化すること。
・中小企業金融は難しい。貸し倒れリスクが非常に高い中小企業に高い金利で貸し付けるのは仕方ない。少なくとも20%は普通。グレーゾーン金利を禁止したのは改悪。

ホリエモンさんが農協を中心とした金融を正常化すべきだと強く主張している。日本全国の優良な農家から吸い上げたお金を農林中金がサブプライムローンみたいなわけわかんない金融商品に投資しまくって大損をこいている。木村剛さんだけでなく、断罪されるべき存在はもっといるのでは?

■孫正義と堀江の違い
PDCAサイクルをうまいことまわせているのが孫正義。金融業界では虚業であると言われていた。90年代後半から失敗の連続が続いた。ゲームバンク設立、テレビ朝日の株式買い増し、ジフ・デイビス資本参加、日本債券銀行への出資などすべて失敗していたが、ボーダフォン買収にてすべてをひっくり返した。
・一度宣言して実行したものを、少しずつ修正したり、変えたりしながら前に進んでいる。それから、NTTに嫌気がさしていた取り巻きを一気に味方につけた部分も大きい。大衆や業界人の扇動の仕方がうまかった。

ソフトバンクの孫さんと元ライブドアの堀江さんの経営姿勢の違いが分かる。孫さんはいろいろやりまくってもそのあとの引き際の良さとフィードバックができているってことなんだろう。光の道構想もぜひ実現してほしい。

■これからの成長産業
・必要なことの二つの切り口
(1)緩やかなインフレ状態にしてデフレ状態にしてなんとなく成長した感覚にさせる。日銀が23%の物価上昇を目標に掲げる。国債などを買い取るなどして、緩やかなインフレにもっていく。インフレターゲットを発動すること。
(2)デフレ・インフレどうこうよりも、環境・IT・バイオなど成長可能性の高い分野に投資して成長する構造改革路線。

勝間氏が経済成長改革路線として①日銀が積極的に介入してインフレターゲットを行う無理やり数字をいじくる方策、②イノベーションを起こして産業の根幹から構造改革すべきだ、、という二つの方策を示している。組み合わせもあるよね。

■農業は成長マーケットだ!
食糧自給率なんてどうでもいい。海外と貿易することを目標に、システムを全部見直す。FTAをやってオープンな競争をさせる。デフレ脱却、円高是正を進めつつ、FTAを推進して、農家にも海外で自由にものをうらせるようにする。日本の農家は絶対国際競争力があるはず。
米の自由化を行って、海外から米をどんどん輸入する。外国でジャポニカ米をつくって輸入する。トヨタ自動車ように海外デビューさせてから輸入させる戦略と同じ。

TPP問題で揺れる現在、農業の在りかたは重要だな。医療と農業は基本的に国に張り付いてるからな。結構難しいけど大型の改革をすれば、日本は変わるか?

【まとめ&感想】
人に嫌われたらどうしようとか、そんなんどうでもいい。徹底的に情報収集して、勉強して、起業して突き抜けろ。そんな声が聞こえてきそうな本。人からこんな風に思われたらどうしようとか悩んでいる時間自体たしかに無駄なんだな。。。

勝間本とホリエ本での必見の二冊はこちら。お金のあり方力強く主張している。
新・資本論 僕はお金の正体がわかった (宝島社新書)
勝間和代のお金の学校―サブプライムに負けない金融リテラシー

2010年12月27日月曜日

「実況LIVE企業ファイナンス入門講座」を読んで

実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本
実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本


投資銀行青春白書図解 株式市場とM&A (翔泳社・図解シリーズ)で知られる言わずとしれた保田隆明さんの本。もともと六本木ビルズで行われた実況ライブを本でまとめたもので、結構分厚いものとなっている。実務の段階からいろんなこぼれ話までざっくばらんにいろんな話が盛り込まれているからかなり豊富で充実している。上記の2冊とは異なり学生向けのゆるい本ではなくかなり専門的な部分まで踏み込んで、解説しており、読みごたえのあるいい本だった。
結構前に買ってパラパラめくっただけで置いておいたけれ、そろそろガチで読もうと思い、まとめながら一気に読破した。
全部は説明できないけれど、印象に残った部分は以下の通り。

■ベンチャーキャピタルと銀行とのバランスのとれた付き合い方
・企業の経営が徐々に軌道に乗り出すと信用力もアップして、銀行が融資に応じてくれるようになる。銀行からの融資を受け入れると、元本の返済・利息の支払いが生じる。収益計画上の費用に支払い利息分のコストが加わり、資金繰り表では元本と利息の返済計画を盛り込む必要性が出てくる。
・銀行とベンチャーキャピタルの大きな違いはリスクの許容度である。ベンチャーキャピタルは、そもそも成功確率が非常に低い中に飛び込んで投資をするため、投資の失敗確率は高いと言える。銀行業は基本的にはローリスクローリターンな商売であり、融資をする場合は失敗は許されない。確実に元本返済と利息支払いが可能であろうと考えられる。


銀行とVCのスタンスの違いが分かる。銀行は間接金融としてあくまで低リスクの融資をする。VCは百戦錬磨で一攫千金の気持ちでファンドを組んで投資をする。

■アナリストの独立性
・株式のアナリスト、債券のアナリストは、投資家に対して売買推奨を行う。中には、「この会社の株式は投資先として魅力的ではない」というレポートも当然でてくる。ただ、そのように書かれている企業側としては、面白くない。そのためにかつては、アナリストがある企業を評価しないレポートを発表した際には、当該企業の財務部の人間が証券会社にクレームを付けることもあった。その場合は、アナリストに直接クレームを付けるわけはなく、投資銀行部の人間にクレームを付ける。アナリストのクライアントは投資家であり、企業ではない。証券会社のなかでも、企業をクライアントとしているのは投資銀行部門であるので、「あなた達にはお願いしませんよ」と圧力をかける。
・実際のところ、資金調達やMAを遂行しうたときに、投資家からの信任の厚い株式のアナリストがポジティブな評価をすることで、案件を正当化することは可能なのである。
・このような背景のもと、2000年頃には投資銀行部門と株式のアナリストそして企業の癒着が問題となり、法定で有罪となったアナリストも登場した。ここから体制ががらりと変わり、クリーン状態になり、今では株式アナリストの独立性が担保されている。
・やはり、企業に関してネガティブなアナリストレポートは依然として数が少ないのが事実である。ネガティブなレポートを書くぐらいであれば企業をカバーしないという手法がとられているようである。


アナリストにもバイサイドのアナリストやセルサイドのアナリストがいるが、これはセルサイドの話。
アナリストとしてのジレンマがよく分かる。職業としてのアナリストの苦悩がわかる。また、M&A部門とは絶対切り離して独立性を維持しないと大変なことになるのだ。

■事業売却としてのMBO
・企業の規模が大きくなってくる、複数の事業部を抱えることになる。中には、会社全体を凌ぐ勢いで成長をする部門がでてくる。残念ながら売却及び対象となる事業も出てくる。企業を売却する場合でも、最近では、MBOという売却先が企業経営陣であるケースが出てきた。ひとつの理由は、敵対的買収防衛策としてMBOである。もう一つは、物言う株主からのプレッシャーを避けて、より経営陣の裁量を経営が行える環境を獲得するためである。

外資系のアクティビスストファンドが日本で暴れたいたころ買収防衛策としてMBOして非上場化することが多かったと聞いたことがありますが・・・。上場しなくてもいい会社はいいですからね。

■ストックオプションとは
ベンチャー企業株主政策で重要なものの一つにストックオプションがある。まずは、将来株式を購入できる権利のことをいう。それだけを聞いてもピンとこないが、人気のコンサートやスポーツ観戦で配られる整理券と考えればよい。整理券やチケット購入ができるのと同じように特別な価格で株式を購入できる。ストックオプションもこれに似ていて、それを持っているひとでだけ特別な価格で株式を購入することができる、といえる。
・ベンチャー企業を中心にモチベーションの向上策で導入されることが多い。というのは、株価が低い段階でストックオプションを発行しておけば、将来上がった分だけ、オプション行使時に利益を得ることができる。ベンチャーに勤務する人が、突然オプションにてお金持ちになったりするのはこのためである。
・実際ベンチャーは経営危機と背中合わせだから、自ら好んで株価と同じ値段を払って、オプションを欲しがったたりしない。
株価と同じ行使価格のオプションはただで配ったりする。これをフリーワラントなどという。


ベンチャーにとって従業員のモチベーション施策は重要。「起業ってこうなんだ」でもでてきた。

■借入金と株式のバランスを考える
・必要なお金は全部借入金で調達すればWACCは小さくなるし、それでいいではないかという議論がでてくる。しかし、借入金を増やしすぎると、今度は倒産のリスクが高まる。資金調達において、WACCが最少となるように、借入金と株式のバランスはどのあたりにするかを探ることが企業の財務戦略上は重要になる
・実際、無借金企業は確かに経営の安定度は高いが、資本コストが高くついているためある程度の借入金を活用した方が企業価値は向上する。格付け機関も最上級の格付けを得ることは経営上あまり重要ではなく借入金を有効活用し、そこそこの格付け(Aぐらい)を維持するほうがいいとオフレコベースではいっている。

直接金融と間接金融を用いたバランスの良い資金調達方法が大切なのだ。WACCと負債比率の関係から説明している。格付けってとにかく高ければいいわけでもないんだなあ。

Google,Yahoo,Microsoftの一例(配当政策について)
・インターネットの検索エンジンで有名なGoogleは配当を行っていない。今後も当面は配当を行う必要はない、と同社ウェブサイトでも書いてある。一方、日本国内の広告代理店最王手電通の純利益が約300億円、フジテレビも日本の上場企業の平均配当性向を上回る配当を支払っているGoogleは配当がゼロである。配当として利益を株主に還元するよりは、内部留保として蓄積し、成長投資に充てて株価を向上させることで株主に還元しようという戦略に基づく判断である。そもそも、創業者2人で起業した会社であるため、大株主の二人に株式を還元してもしょうがないというのが本音である。
・一方、YahooMicrosoftもかつては同じように配当を支払わずに株価上昇で株主に報いるとしていた企業である。しかし、最終的には内部留保のやり場に困り、まだ株価上昇が鈍化したことで、株式から配当を支払って欲しいという要求が高まり、それにこたえる形で配当の支払いを開始した
・日本でもベンチャー企業は配当の支払いが見送られるケースが多く存在しますが、投資家の目が厳しくなっていることもあり、最近でもIT企業など、そもそも投資額がそれほど大きくない企業でも上場後に早めに配当を早めに行う企業が増えている。しかし、株主の目を引きたいからという一過性の可能性もある。

Googleがなぜ配当を行わないのか理解できた。ただ配当を行えれば良い企業なのか、といった問題は別問題である。できたばっかのベンチャーなんかはちゃんと内部留保を蓄積して株価をあげることの方がすごく重要だったりするのだろう。

■ケーススタディ5:ソフトバンクのボーダフォン買収案件
財務内容に余裕がなく、資金調達手法が限られるケースとしてソフトバンクによるボーダフォンの日本事業部の買収案件がある。ソフトバンクはもともと多額の有利子負債を抱えており、格付け上はBBと投資不適格(SP)に属していた。これ以上の有利子負債を抱えることは経営不安を増幅させる一方、このよう状態の企業には積極的なお金を追加で融資したいという金融機関も多くは存在しない。
・そもそもの買収金額が2兆円弱と多額であるため、当時時価総額4兆円弱のソフトバンクが買収資金を全額株式で発行することは不可能である。(通常、増資は時価総額の10%~30%が限度とされている)
・そこで、LBOという手法を用いることになり、買収先の企業の将来のキャッシュフローを担保にお金を借りる手法。ソフトバンクの例では、1.3兆円弱のLBOローンが金融機関から提供された。
・金融機関はソフトバンクに融資をするのではなく、買収するボーダフォン日本法人に関する収益性、成長性に対して融資を行う。どれだけ、ソフトバンクの事業内容、収益状況が悪化しても、携帯事業さえ好調であれば融資が返済されるスキームである。これは、携帯電話事業のキャッシュフローがLBOローンの返済に当てられているからである。

他にも日本板硝子やJTのケーススタディが紹介されており、分かりやすく面白い。ソフトバンクの買収案件は我が国至上最大と言われており理解しておきたい事例である。さすが孫さん!

【まとめ&感想】
・著者は、現在小樽商科大学のMBAコースの教員なのだそうだ。これまでの内容とは違い現場ベースでかなりがっつりした重い内容となっており勉強しがいがあった。
・特に、DCF法のプロセスWACCの考え方などについても分かりやすく、デューデリのプロセスや実際の投資銀行の実務・立ち位置、などおもしろく新たな発見が多かった。「アナリストの独立性」、「株主優待券の功罪」、「繰越決算金による節税効果に関する誤解」、「自社株買いによる敵対的買収防衛策」などコラムが面白かった。
・あと、ソフトバンクJT日本板硝子などの豊富なケーススタディがとても良かった。「ライブドア監査人の告白」で知られる公認会計士である田中慎一との共著「MA企業のホントの価値」もぜひ買って読んでみることとする。
M&A時代 企業価値のホントの考え方―株式市場から評価される会社のお作法

2010年12月24日金曜日

「起業ってこうなんだ!」を読んで

起業ってこうなんだ!どっとこむ
起業ってこうなんだ!どっとこむ


 サイバーエージェントの藤田氏一橋大学教授の米倉氏との対談。まだライブドア事件の前だから、IT業界が一番調子がよかった時期に出版されている。対談形式だから読みやすくサクッと読めてしまった。あんまり、藤田さんに興味を持つことは今までなかったけど、なんか表紙がいい感じだったからついついブックオフで買って読んでしまった。
 経営の現場・実務を踏まえてファイナンスの話・M&A、マネジメントの話などざっくばらんで結構おもしろい。学問としての経営学というよりは「実際現場ではこんな感じよ」ってスタンスの藤田さんの話は良かった。


印象に残ったのは以下の通り。


■総合商社化するネット起業
・ネットのメディアももともと寡占状態だった。サイバーコミニュケーションズは、電通とソフトバンクの共同出資会社している上場会社があった。ところが、ヤフーが他社にも広告を下ろし始めた。ネット業界では、どこかの強い広告代理店が枠を抑えているという構図がほとんど存在しなくなった。利権がまとわりついているとろくなことが無い。
・もともと、利権を抑えることによって、広告代理店の存在や強さを維持しているものは、日本では優秀な電通や博報堂の人材で奇跡的になしえている。
・マーケティングに詳しい人がその会社に一人いれば、メディア戦略は決まる。代理店の役割は無くなり、買付けと広告の製作だけが存在している。ある意味では、電通、博報堂は日本の総合商社に近い、人材力を中心におさえてファイナンスもすれば、クリエイティブもする。


ネット起業でたしかに商社みたいになってる・・・。金融もやれば流通も広告も出版もなんでもいける。あとめちゃくちゃ参入障壁が低いところが強みなんだろうな。

■スタートアップはおもしろい
今こそ、新たな産業フロンティアと雇用を創出するようなスタートアップが望まれている。既存の大企業は「株主重視」という株式市場からのプレッシャーで、そう新しい分野に出てくることが少ない。
・ソフトバンクの孫正義が韓国から持ってきたADSLの技術も技術的には、本命ではなかったが、日本をあっと言う間にブロードバンドの国にした。ISDN地獄の時代は続いていたかもしれない。やってみなければ分からない。
・マザーズやヘラクレスも整備された。ベンチャー企業もIPOだけでなく、売却や合併など実に多様なゴールが見え始めた。フロンティアには、日本で一番頭が良く、根性がある奴に来てほしい。

孫さんのADSLの話は興味深い。今ではもう「光の道」とかもやっているし。これかも期待したい。
ベンチャー市場もライブドア事件後は落ち目があったけど、最近また勢いを取り戻してるんでは・・・?錯覚かな

■ストックオプションってなんだ?
M&A、人的資源、脱カリスマ、モチベーションなど。ベンチャーが抱える問題は大きい。なかでも報酬の配り方は難しい。
ストックオプションで潤うことは良い。あまり前面に出してぎらつくのはよくない。
ストックオプションの期限がきたらやめるかやめないかというのは、良くない。
マネーインセンティブで人を動かすはあんま良くない。組織の和を大切するべき。
・ストックオプションのいいところは、自分が頑張って会社の価値を上げれば自分の資産が増える。


藤田さんがストックオプションを自社でどう活用しているかが分かる本だった。ただし、マネーインセンティブで人を動かすのは良くないという、藤田さんなりの経営思想が良く分かる。

■上場はすべきかどうか?
・上場すれば、資金調達の道も開かれるし、信用力もあがる。不特定多数の株主にみられているという厳しい環境にあれば、会社は恐怖に感じる。当然経営者が責任をもってやれば、上場する必要はない。サントリーなどはおそらくずっと上場しない。
・例えば、ワールドなどのファッションビジネスなどは巨大な資金調達を必要としないし、株式市場に上場に依存する必要はない。ワールドの非上場化は面白い。
・「利益率が低いのは、日本的経営を守るため」(HBSクレイトン・クリステンセン教授)
・日産のカルロス・ゴーンとか、キャノンの御手洗さんはちゃんと短期の利益も出して、有利子負債も削減して、成長プランも書いている。日本的やアメリカ的は関係なく、現代の上場企業の第一責任である。


たしかそこまでいうか(勝間・堀江・ひろゆき)の対談で「一昔に比べて日本で上場するメリットはほとんどなくなった」というくだりを読んだ記憶がある。外資のファンドが暴れているときはMBOで非上場化してしまう企業も多かったように、もう一度上場のメリットとデメリットを再整理する必要があるだろう。

【まとめ&感想】
対談形式だtったので、肩の力を抜いて読めた。すこし前だけどいい本だった。
学者の米倉さんがいい現役経営者のいい引き出しやくになってくれたと思う。
こちらも必見!まだ読んでないけど。最初にハイパーネットの話が出てくるらしい。
渋谷ではたらく社長の告白 (幻冬舎文庫)

2010年12月19日日曜日

「成功のコンセプト」を読んで

成功のコンセプト (幻冬舎文庫)
成功のコンセプト (幻冬舎文庫)

就職活動において実際に楽天の説明会のに参加した経験もあったことから、就職活動時期に読んだ。すこし前の本だけど。 楽天創業者の三木谷さんが自分の起業前からのストーリーを書き下ろした本。
IT起業家というとものすごい野心家というイメージがあるが三木谷さんはそんなことない。それが、この本を読むと良くわかる。誠実というか、真摯でなんかすごいまじめ。だけどすごくかっこいい。だから、成功できた部分がかなり大きいのだろう。
2004年から2005年ぐらいまで、ライブドアの堀江さんとよく対比されることが多かったが、楽天はライブドアと違い、現在では成功の軌道に乗ったといえる。

印象に残ったのは以下の通り。

1997年楽天創業
1997年、インターネット上のショッピングモールは過去のものになろうとしていた。
NTT、NEC、富士通、三井物産などをはじめとする大企業が当時すでにインターネットのショッピングモールに乗り出していた。しかし、どの企業も成功とはほど遠い状況であった。
・HPも倒産寸前のデパートのような状況になっていた。すでに、日本人にはなじまないビジネスモデルだと烙印が押されていた。ホームページさえつくれば、店の売り上げがあがると信じていたからだ。成功のコンセプトはそこにあるのだ。

楽天はショッピングモールに足りない何かを見い出したのだ。それが成功へ鍵だったといえる。

■面白い仕事はない。仕事をおもしろくする人がいる
・楽天は、オフィスの掃除を自分たちで行うようにしている。これは、創業当時から続いているもので現在も変わっていない。大きな目標や夢を抱いていると、目の前の小さなことを見逃してしまう。だから必ず毎日掃除をする。足元の現実を必ず忘れないようにする。100億円の買収案件を抱えながら、目の前の椅子の脚もきれいに磨くこともおろそかにしない。
・仕事はいつも知わき踊るスリリングなものとは限らない。毎日毎日退屈な仕事をしなければいけないこともある。それを、会社や上司のせいにして、いい加減な仕事にしたら自分が損をする。
・興銀のはじめの職場は外国為替部。来る日も来る日も書類にひたすらハンコを押し続けるような部署だった。ルーティンジョブの典型例のような部署である。だが、一度もつまらないとは思わなかった。
・どうすればもっと効率よく、間違いなく作業ができるのか、どうすれば事務の女性たちが快適に仕事をできるのか、どうすれば楽しい職場になるのか、をいつも考えていた。きれいごとではなく、誰かにためになるという思いが無味乾燥な仕事でも楽しくやれる。一所懸命に取り組めば取り組むほど、職場のみんなは笑顔になっていく。書類のオペレーションがいかに重要であるか学ぶことができた。義務感だけでやっていたら面白いとは思えない。廊下の雑巾がけに、真の喜びを見いだせる人が本当のプロフェッショナル。

仕事を人生最大の遊びにできたことが三木谷さんにとっては最高だったのだろう。むしろ、おもしろくなくても、おもしろくするのだ!という哲学。なんか見ているこっちがおもしろくなってしまうそんな雰囲気をつくれたらいいのだろう。最近、「場の雰囲気」ってすごく大切だと感じる。

■既成事実が世の中を変える
・起業直前の間もない頃、慶応大学の大学院生が就職活動で自分を訪ねてきた。名前は、本城慎之介。彼は、興銀に入ることを熱烈に希望していた。高杉良の「小説 日本興業銀行」を読み、興銀に憧れたという。興銀は日本の産業を再生し、活性化すること役割だった。しかし、その役割を終えようとしていた。その学生にこう語りかけた。
・「銀行とか商社とか、大企業が日本を変えたり社会を作っていくという時代は終わった。これからはむしろ中小企業とか個人が既成事実を積みかさねて世の中を変える。その時点でその学生は就職活動をやめた。「既成事実が世の中を変える」という私のその言葉が彼の人生を変えた。こうして楽天は二人でスタートした。
みんなの就職活動日記は、本城氏が生みの親である。Windows95年が発売されて間もないころ、本城は自ら立ち上げたHPにて就職活動の日記を、インターネットを用いて公開していた。学生からの質問をベースにメ―リングリストにして配信していた。すでに、新聞や雑誌などで取り上げられていた。個人情報発信力を最大化できるインターネットの威力をすでに実践していたのだ。

この部分はとても印象的だ。特に自分が就職活動時期に読んだ本だったから余計本城さんが自分に重なって見えた。すごく、やる気を引き出してくれるいいシーンだ。

■コミュニケーションの潜在的欲求が成長のカギ
江戸時代から300年続いた京都の老舗であったとしても、今も元気に商売をしているところは毎年のようにチャレンジをしている。仮説・実行・検証・仕組化で行う。仮説にも良い仮説と悪い仮説がある。どうすれば良い仮説が立てられるか?それは、「そもそも論」を考えること。「そもそも何のためにその仕事をするのか?」を考えること。
・楽天のモールを始めた時、ユーザーとのコミュニケーションをするのはモール側の仕事となっていた。ここで、仮説を練り直した。「そもそもユーザーからの問い合わせや意見は何のためにあるのか?」と考えていた。それは、「商品を買って頂くユーザーに納得してもらうこと」。そうすると、ユーザーとコミュニケーションをとるのは出店する当事者であることが望ましい、という結論に至った。
・楽天市場は便利だから急速に発展したと思われている。実はそうではない。ユーザーと出店者を結びつけることに成功したから。デパートやスーパーでの買い物よりずっと人間的だったりする。

そもそも何のために?そもそも何がしたい?自問自答することの大切さを最近よく感じる。楽天はそれを突き詰めたからこそ今があるのだろう。

【まとめ&感想】
三木谷氏の経営哲学や人生論がよくわかる本だった。創業当時の話やショッピングモールを成功に導いたオペレーションなどおもしろい話が多かった。仕事中毒当事者意識「そもそも論」を用いた仮説検証の話元副社長本城慎之介との出会いや興銀の外国為替部での仕事観など三木谷さんの人生哲学が分かるいい話が多かった。
こちらも必見。
成功の法則92ヶ条

2010年12月15日水曜日

「君がオヤジになる前に」を読んで

君がオヤジになる前に
君がオヤジになる前に

ホリエモンの若者向けの一冊。自分の20代・30代を振り返りながら若者に向けたメッセージが投げかれられている。もともとホリエモンの書籍は社会に大して物申す的な本が多かった。(新・資本論 、僕はお金の正体がわかった (宝島社新書)  まな板の上の鯉、正論を吐く (新書))だけに今回は、自分の人生を赤裸々に語った人生論のような本であった。20代、30代を振り返っての経験談の基づいたいい本だった。

堀江さんは人生でもっとも辛かった時を二つだったと答えている。

①離婚をした時
②証券取引法違反で逮捕された時(ライブドア事件)

とにかく頭を抱えるほど辛い経験をしてきたから、こんな本が書けるんだと思う。
印象に残ったのは以下の通り。

20台が一番の働き盛り
20代は、気力も体力も野心も最大限である。20代で成功体験を得られれば、必ず世の中が変わってくる。追い込まれたときにふんばるための自信になる。何でも良い。ブログを本格化して書籍がくるほどメジャーにするとか、職場のアイドルを口説くとか、これまで縁がなかった取引先から仕事をとるとか。上司からの評価ではなく、自分自身への危機感を持つべきである。

堀江さんがいかに20代をシビアに生きてきたが良くわかる。

■事前準備ができていれば緊張はない
・大学受験の際に勝負強いほうだと感じた。なぜなら、事前準備を欠かさないから。前夜は良く寝る、事前にトイレにいく、便意をもよおすといやだから朝飯は抜く、などである。十分な事前準備を必ずやっていたから大丈夫だった。また、人から喝采をあびたり、よくやった、と褒められる経験を一度でもしたら緊張なんて吹っ飛ぶはずだ。アドリブに強い人は日常のトレーニングをどれだけ積んでいるか知らないはずである。


アドリブに強い人はとにかくトレーニングを貯め込んだ人だとよく分かる。堀江さんはなんだかんだで東大現役合格、ITベンチャー社長、とにかく勝負という勝負を勝ち抜いてきたのだ。

■逆境と向き合うには寂しさと向き合え
・負のループから抜け出せない人は、寂しさへの耐久力がない人だと思う。自分の孤独と向き合うことが大切。自ら苦しい状況に追い込んで耐え抜かなければならない
突き抜ければ、人生は格段におもしろくなる。

寂しさととにかく対峙することの大切さは、よくわかる。そこで突き抜けることが大切なんだろう。

■思考を続けていれば怖いものなし
・儲かる仕事の大原則は、①元手がゼロ、②定期収入がある、③在庫リスクがない、④利益率がいい、の四つである。
・事業が軌道に乗るかどうかは不安でしょうがないはずだが、思考をひたすら続けていることが大切である。市場の現況、仕入ルート、商品の知識、損益分岐、など徹底的に考え抜いているか?自分のキャパシティのなかで思考に思考を重ねているか。飛行機や新幹線もボーっとしているのはダメ。ニュースを読んだり、企画書をまとめたりする。頭の中を常に思考で満たしておく
人の最大の恐怖は情報不足である。

儲かる大原則は分かりやすい。とにかく考え続けろ、というのは分かる。とにかくいろんなことにアンテナをはり、興味を持って考え続けろというのは大切なことだ。

【まとめ&感想】
すごくモチベーションを高めてくれて、やる気がでるいい本だった。ただ、人間関係を切り捨てろ、結婚は意味がない、友人も切り捨てろ、というのちょっとやりすぎな気がした。そこまでやって効率を上げてもいなんか意味あんの?っていいたくなってしまった。それ以外はすごく共感できた。

こちらもの必見
田原総一朗責任編集 2時間で人生が変わる! 嫌われることを恐れない突破力! 世間という牢獄から脱出する方法 (2時間で人生が変わる!)
就職しない生き方 ネットで「好き」を仕事にする10人の方法

2010年12月13日月曜日

「ざっくり分かるファイナンス」を読んで

ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (光文社新書)
ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (光文社新書)

来年からの就職先をにらんで、最近読む本も会計やファイナンス系の本が増えてきました。
石野雄一さんの本で、ちょっと前の本ですがアマゾンの評価が結構良かったので買ってさくっと読むことにした。理系出身の銀行員で簿記をはじめとしてなかなか企業財務の理解には苦労したようだ。MBAからの帰国後に日産でゴーンCEOのもとで、にキャッシュマネジメントに従事してファイナンスに開眼した。現在は、板倉雄一郎事務所にて、ファイナンスセミナー等を担当しているそうであり、一度お目にかかってみたいものである。
ところで、日産のV字回復って一時期賞賛されていたけど、今はどうなんだっけ?

さて、印象に残った部分は以下の通り。

■会計と財務
・会計(アカウンティング)と財務(ファイナンス)は、違いは両者の違いを明確に答えられる人は少ない。会計は利益を扱い、ファイナンスはキャッシュを扱う。ここでいう利益とは、「商品やサービスを作ったり売ったりする上でかかった費用を差し引いたもの」である。もっと
黒字倒産とは、利益は出ているのに会社が未回収であるときに起こる。そうして資金繰りに困ったあげくに・・・。企業活動によって生じるお金の流れのことをキャッシュフローという。そして、このお金の流れには入金と支払がある。これは会計上の利益とは異なり、実際にキャッシュが入金されたり支払が行われたりしたとき、認識される。この場合の認識とは、企業の預金の残高に反映されるということである。
・また、2番目の違いとして会計とファイナンスでは、時間軸が異なる。ファイナンスが重要視されるようになった理由は、まさにこの点にある。言い換えれば、経営者は常に「現在の投資」と「将来のリターン」のバランスをとる必要がある。投資亡くして、将来のリターンがないのは当たり前である。

■資金調達の方法
・基本的には、「有利子負債による調達」「株主資本による調達」がある。有利子負債を「デット」、株主資本を「エクイティ」、そして有利子負債で調達する場合は、「デット・ファイナンス」、株主資本で調達する場合は、「エクイティ・ファイナンス」という。
・そして、有利子負債は銀行借入と社債の二つに大きく分けられ、銀行借り入れを間接金融、社債と株主資本と合わせて直接金融という。
・投資家が金融機関に対して、投資をする。そして、投資された金融機関が企業に対して融資という形の投資をする

■無借金経営は債権者の発想
・株主には、企業の成長性を重視する。売上がどんどん上がっていくことを望む。一方で、債権者は企業の安定性を重視する。それゆえに、有利子負債を増やした方が、
それゆえに有利子負債を増やしたがらない。これも銀行員だったときには、借入が少なく業績好調な会社に「よその銀行から借りないでウチから借りてよ」なんてことをいつも言っていた。銀行員というものは、有利子負債、つまり借入がない企業、倒産しないであろう企業に貸したいと思っている
「あの会社は、無借金経営だからいい」などと言われるが、ここまで読んでいただけたら債権者の視点であることがよく分かる。


■負債の節税効果
有利子負債の節税効果というものがある。表面上は5%の金利で借り入れをしていても、実は支払金利自体が経費として計上できるので、税金(法人勢)がその分安くなる。だから、税引き後の実質金利は5%よりも下回ることになる。
・何もないところからお金は生み出されない。法人税の支払い額が利害関係者の間で配分を変えてしまったということ。両者の法人税の支払い額の差額であり、法人税の課税対象額から控除されていることが分かる。

■割引率にはWACCを使う
・事業価値をもとめる際に将来のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引く、といいましたがその際に割引率に何を使えば良いのか?WACC(加重平均資本コスト)
の登場である。
WACCとは、負債コストと株主資本コストを加重平均したものだった。経営者にとってみれば、資金調達のコストであった。
ではなぜ、WACCで割り引くのか?
・たとえば、あなたが信頼している人に100万円貸すのであれば、1年後の返済額は102万円でもいいわけである。しかし、リスクがある人に貸すには、120万円、いや130万円くらいでしょうか?あなたのリスク認識が異なることから、期待収益率に違いが出てきたものである。
投資家の視点にたった場合の期待収益率は、経営者の視点にった場合にはWACCである。つまり、視点が違うだけで両者は全く同じものである。「少なくてものWACC以上の収益率で運用してくれよ」という投資家の願いが込められている。言い換えれば、投資家にとって運用して欲しい最低銀の収益率ということである。これが、企業が生み出す将来のキャッシュフローをWACCで割り引くことの本質的な意味である。
■運転資金によるマネメジント
・運転資金に関して、かつて日産自動車有利子負債をどんどん削減していたときにどんな手を使ったか?
・資産を事業に関連のある「コア資産」、事業に関連のない「ノンコア資産」に分けて後者を売却したことは、よく知られている。売掛債権を削減するために、売上債権を削減するために、売上代の回収期間をできるだけ短くするということにした。さらに、在庫(棚卸資産)をできるだけ減らすようにした。
在庫水準が高かったことに加えて、このようにクルマを売った代金の回収期間が長かったことが有利子負債の増大につながっていたのではないか、という反省のもとに日産の財務部は販売店の回収期間ランキングを毎月レポートしていた。言ってみれば、こうした地道な活動をすることによって、回収と支払とのギャップを埋めていき浮いた資金でもって有利子負債の返済を行っていた。

【まとめ&感想】
今回は、会計や財務のテクニカルな部分が多くてブログとしてはちょっとつまんない記事なってしまったかもしれない。でも、かゆいところに手が届くいい本だった。熟読して理解を深めたいものだ。関係ない人にはどうでもいい本かもしれない。
最後にこちらも注目!

2010年12月11日土曜日

「60歳までに1億円をつくる術」を読んで



60歳までに1億円つくる術―25歳ゼロ、30歳100万、40歳600万から始める (幻冬舎新書)
60歳までに1億円つくる術―25歳ゼロ、30歳100万、40歳600万から始める (幻冬舎新書)

資産運用の専門家として有名になりつつある、内藤忍さんの本。内藤忍という存在を初めて知った本。就職活動時期に本屋で手にとった気がする。お金の在り方経済の見方資産形成の方法をすごく分かりやすく解説してくれる実践的な本だった。
 マネックスという証券会社に注目したのも彼のおかげだし、実際に投資をはじめてみようと感じたのも彼の本を読んでからだろう
金融の様々なセクションで仕事を経験してきたことが、自らのキャリア形成につながったといわれる。
印象に残った部分は以下の通り。

■稼ぐ力・健康・時間の三要素
・一般的には、ストックと言えば金融資産をさすが、お金だけではなく目に見えない資産もストックに含まれると考えられる。
「稼ぐ力」・「健康」・「時間」のような将来の収入を運んでくる源のようなものである。
・健康は大きな資産である。健康が良くないと、医療費がかかったり、実動時間が少なくなったり日々の仕事で生産性が落ちたりする。したがって、体に良い食事をしたり、体力維持のため運動をしたりすることが、ケチらずに「投資」と考えることができる。

たしかにそうだなあ、と感じた。不健康がもたらす金銭的負担は結構大きかったりするし。
時は金なりという通り時間も大切。稼ぐ力はこれから身につけなければ・・・。


■住宅ローンのリスクはFXのレバレッジと同じ
・住宅は買っても借り手も経済的には同じだといったが、これからは、賃貸のフレキシビリティーがますます大きくなるFX10万の元手で1000万などの巨額のお金を動かすことで知られているが、住宅ローンも同じ。考えてみれば住宅ローンもこれとよく似ている。家は換金性が低いし、地震や火災のリスクもあるし、手入れも自分でしなければならない。

ホリエモンさんの「新・資本論」で取り上げた通り、住宅ローンも考えものなのだろう。

■ネットですべてできないか考えてみる
・あらゆることをネットでできないか考えて見る。なぜなら店舗や人件費がかからないから。ホテルの宿泊料を電話で予約した場合とインターネットで予約した場合は値段が違う
・インターネットには「一覧性」という特徴がある。たとえば、証券口座の取引履歴を見たいとき何年何月と入力するだけで、パッと出てくる。金融とITは相性が良いから、お金の出し入れに関することは基本手にネットでできないか考えてみることが大切。

ネット決済、ネット銀行、ネット証券、ネット通販もうなんでもネットで済む時代になったものですね。

プロの専門家からの診断を
保険の力は、「すごく確率は低いけど、起こってしまったらすごい損失になること」だと言われる。働き盛りのお父さんが亡くなってしまうことはまずあり得ないことだけど、もし亡くなってしまったら大問題である」とい点である。
・だから、生保営業マンに相談しても自社商品をすすめられるだけだから、保険専門の独立系FPにきちんとお金を払って診断をお願いして見直すべきなのである。一時間の相談に一万円払ったとしても、毎月支払が2000円節約できれば、半年後にはもう元を取れる。相談する際には、相談相手をよくみるべきである。

筆者のおっしゃる通り。これからは独立系FPの時代が来るだろう。どこかの会社に属する限り、自社製品を売らざるを得ないのだから。

【まとめ&感想】
ダイエットと投資はよく似ているという点は納得できる。保険に関する話は岩瀬大輔さんの本と連動させればすごくおもしろいし、キャリア形成の視点から見ても、「世界経済は成長し続ける」、という独自の視点もおもしろくダイエットと投資はよく似ているという点は納得できる。保険に関する話は岩瀬大輔の本と連動させればすごくおもしろいし、キャリア形成の視点から見ても、内藤忍という存在にすごく興味関心を持てた。

日経BPの雑誌内藤忍お金の話をしませんか (日経ホームマガジン 日経マネー)も必見。

2010年12月7日火曜日

「プロ脳のつくり方」を読んで

プロ脳のつくり方
プロ脳のつくり方

ちょっと前の本ですが、興味を持って少し前に読んだのでレビュー。
元ライブドア証券の副社長として辣腕をふるった男の話。もともと外資コンサルや投資銀行というエリート街道を歩みながらも、その道を捨ててネットサーフィンでM&A担当者を募集していたITベンチャーに自ら望んで入社したという変わり者。買収劇が起こったのは2005年だからかれこれ5年前の話。
「既存大企業に入って決められた仕事をするより、まだなんだかわからない未熟な状態のベンチャーに入って暴れたほうがおもしろそう」と考えたらしい。

外資投資銀行とは言えど、手が作り上げた仕事を結局は上司の手柄となっていくことに物足りなさを感じていたようだ。(ヒルズ黙示録―検証・ライブドアより)

ライブドアのフジテレビ買収構想の際に当時のでは珍しかったMSCBを用いた資金調達手法を実践した。それが、この塩野誠の手腕だったと言われる。序盤は結構決まり切った話が多かったが、後半部の「交渉力の磨き方」「キャリアのつくり方」」実経験に基づいた豊富な経験談や思考・スキルが出てきておもしろかった。

印象に残った部分は以下の通り。

■交渉は礼に始まり礼に終わる
・年下に対して見下したような大きな態度を見せることは良くない
・交渉の過程で感情的になることや、あえて感情的な言動を使うことも得策なこともあるが、交渉の最初と最後には、必ず礼をつくすこと「あいつはハードネゴシエイターだけど礼儀のしっかりした人だ」言われるのを目指す。

非常に納得できる。交渉事は時に感情と感情がぶつかり合う実にハードなものだから、特に礼をつくすべきだ、という主張に重みを感じる。かつての自分の経験に基づいており、納得できる。

他人への厳しい決断について
・経営者は孤独だと言われる。社員に対して自分が良かれと思ってやったことが、大きな恨みを買うことがある。中小企業の経営者の方が特に多い。
・一番印象的な上司の言葉、「ビジネスの中では厳しいことを言わなければいけないけど、人としての付き合いはずっと続くから」。

交渉の現場において、苦渋の決断を迫られてきた経験がよく分かる。中小企業の経営者がどのようなポジションの人間なのか、決断への覚悟などよく理解できる。


■小さなコンセンサスを積み重ねる
・交渉で最初に捨てるべき先入感は、「相手は分かってくれる」というもの。小さなことを確認し、コンセンサスを取ることによって後戻りしないようにする。小さなことを言った言わないと争ったり交渉が後戻りすることはとても無駄である。
・確認の際には、「おっしゃったように」「ご存知のように」というフレーズが便利


人って案外忘れやすい生き物だから早めに情報を発信し、ひとつひとつ合意を得ながら交渉しなければならない。塩野さんは、人の特徴をよくつかんでいると感じた。

【まとめ&感想】
もともと、僕はスポットライトがあたっている人本人(社長とかリーダーとか首相とか)よりも、参謀的なポジションで活躍している人にとても興味を持つ傾向があるようだ。ライブドアで言えば、堀江さんとか宮内さんよりも、熊谷さんや塩野さんに興味を持った。
そうでなければ、塩野さんの本とかほとんど知らないだろう。当時大学1年生だった私が、ニッポン放送株のTOBの記者会見を見て、あの一番右にいるひとだれだろう?となりきっかけとなって、この本へつながった。
現在は元産業再生機構の冨山さんがいる経営共創基盤にいらっしゃるそうですが、今後の活躍を期待致します。
こちらもすべて読破しましたので、少しずつレビューしていきます。

ライブドア監査人の告白
虚構 堀江と私とライブドア
ヒルズ黙示録・最終章 (朝日新書)
ライブドアの世界一になるキャッシュフロー経営

2010年12月6日月曜日

「社長失格」を読んで

社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由

社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由

ネットでホリエモンと板倉さんの対談みて、興味を持って購入した。TAとして参加した学部生向けの実習の合宿中に持ち込んで一気に読破したもの。対談のなかでも結構話題に上がっていたけど、登場人物の顔ぶれがすごい。ビルゲイツ・西和彦さん・孫正義さん・楽天銀行頭取の国重さんiモードの立役者夏野さんなど、とくかくその後活躍するすごいメンツが登場する。

ハイパーネットはITベンチャーの先駆けのような存在で、ホリエモンさんも板倉さんの「こりないくんの日記」をいつも読んでいたらしいし、サイバーエージェントの藤田さんもアルバイトとしてハイパーネットを訪れる、などいろんなところでいろんなつながりがあるようだ。(渋谷ではたらく社長の告白 (幻冬舎文庫))より。最近では電子書籍ブームに乗っかり、電子書籍での販売も決まったらしい。さすがの名著。第1次ネットバブル1997年から2001年や第2次ネットバブルが2003年から2005年ぐらい。会社が問倒産したのが1997年だから、時代の波からしたら、少し早すぎたのかもしれない。

 ハイパーネットのビジネスモデル、「世界初のインターネットを利用した広告ネットワークシステムであり、利用者は登録時にプロフィールを入力、その属性によってセグメントした広告をユーザーのパソコンに送り込む。利用者は無料でインターネットを利用でき、広告主はターゲットに的確に広告を打つことができる。広告効果も測定できる」というものだ。当時に先進的で見事なアイデアだったそうである。
昔のアカデミーヒルズの要約版も参考になる。
こちら→http://www.academyhills.com/aboutus/gijiroku/24/24_18.html

印象に残った部分は以下の通り。


■やはり一企業である「銀行のなかの銀行員」だった国重氏
『ぼくは、勘違いしていた。国重さんは親しい仕事相手ではあったが、「友達」ではなかった。いざとなれば、国重さんとうう個人から住友銀行取締役という「企業人」にチャンネルが変わるのだ。個人の感情と企業の論理。どこでどう線を引くのかは分かっていたかった。「組織」というものに対する本質的な理解がなかったのだ』

ベンチャーキャピタルの最王手であるJAFCOからの出資を受けて見事なまでに成長の一歩をたどっていたが、そのご住友銀行から融資を断られたことが大きな原因となり資金繰りが悪化することとなったのだ。詳しいことは僕には良くわからないが、VCや銀行とのバランスのとれた付き合い方が大切なのだろう。実際に当時は、BIS規制なども相まって銀行自体も厳しい局面を迎えていたのも大きな原因だそうだ。

■「僕は信頼されていないんじゃないか」といって去っていった副社長の夏野氏
『社員達のなんお目配りもできていない。ぼくはその事実に気づいた。この四か月、ぼくは目先の資金繰りと業績ばかりを気にしていた。役員達との仕事上の付き合いはあったが、彼らが何を考えているのかまでは気が回らなかった。』
『後日夏野氏が吐いたその言葉にはそれが現れていた。配慮が足りなかった。実際には、僕は彼を大いに頼りにしていたのにもかかわらずそう思われていたのである。』

東京ガス出身でMBAホルダーの夏野氏を含め、スペシャリスト達をうまくマネジメントできなかったことがひとつの失敗の大きな原因といえる。ホリエモンとの対談のなかでは、「夏野氏は、一流のレストランでは実力を発揮できるシェフだったが、手持ちの素材でいい家庭料理が作れるシェフではなかった」と語っている。

■「僕のほうからお会いしたかった」と言って現れた孫正義
『「ぼくの方からお会いしたいと思っていました」、やられた。ベンチャービジネスの世界では知らぬ人がいないといわれる有名経営者。孫正義氏が経営危機に陥ったときに若造経営者の僕にお会いしたかったと頭を下げる。なかなかできることではない。』

成功者孫正義の交渉の姿勢がよくわかる。いまさらなが、さすがと思う。その後のソフトバンクは、日本テレコムの買収、ボーダファンの買収を得て見事なまでの経営基盤を築くことに。

■裁判所による破産宣告からの帰宅の電車で
『ぼくはますます憂鬱になって、空いた席に座った。向かいの席に、若い女性が一人座っていた。黒のストッキングに包まれた脚を奇麗にそろえ、青山ブックセンターのカバーのかかった本を読んでいた。栗色の長い髪とはっきりした眉と二重の大きな瞳のせいで白い顔が白く見えた。灰色のニットのワンピースの上に薄手のコートを羽織っていた。ぼくの好みだった。~しばらく彼女を眺めていた。先ほどまで頭のなかを占めていたここ数年間の出来事がいつのまにか蒸発したように体から抜けていた。なにかが沸き上がってきた。あんな女性を手に入れられるような自信が欲しい。無一文のぼくのなかにある一種のの感情が芽生えてきた。もう一度はじめよう。とにかく前に進もう。』

このシーンは、若手企業経営者に好まれているシーンだそうだ。もう一度やってやるぞ!というモチベーションが高められるシーンかもしれない。

【まとめ】
会社がつぶれた理由は読んでいると、いろいろある気がするけど大きく二つに分けて、①金融機関との付き合い方を間違えたこと、②人材のマネジメントに失敗した、ことであると感じた。板倉氏本人もベンチャーやる人はぜひ読むべきだといっていたけど確かに読む価値は大。
米国のビジネススクールでは、倒産した会社の経営者を招いて失敗の原因をレビューする講義があるそうだ。失敗とは前に前進し、建設的な議論を生み出すためのステージという位置づけだそうだ。何でも失敗をすると、蓋をしてみないようにしたがるけど、そうれはそうじゃなくて成功への布石なのだと考えるべきなのだ。この本を読んでからってわけじゃないけど、最近そんなことを思う。

PS:あと倒産後板倉さんはファイナンスセミナーなんかをやっているそうですが、その板倉雄一郎事務所のパートナーでいらっしゃる石野さんの本も結構わかりやすいので、こちらも注目。
ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (光文社新書)
道具としてのファイナンス

2010年12月3日金曜日

「マンガ版 新・資本論」を読んで

マンガ版 新・資本論
マンガ版 新・資本論

ホリエモンの漫画版の資本論。これまでの日本人の「お金に対する考え方」をひっくり返す。マンガなのでさくさく読めて、電車の待ち時間と乗車時間で読んでしまった。主張が明快なので、何が言いたいのかすぐ分かる。いきなり、迷える若者たちにいきなりホリエモンが現れて一括するというストーリー。

主張はとにかく分かりやすく、以下の通り。

○生命保険なんか入らなくてもいい。
○住宅ローンに入ることのリスクは大きすぎる。
○銀行から借りられなければ、ソーシャルレンディングを使えばよい。
○とりあえず、起業すべし。

【まとめ】
大前研一のマネー力 (PHPビジネス新書)では、「日本人のマネー力は幼稚園レベル」と綴られていたが、実際にそうかもしれない。迷わず本当に素直に思ったことをストレートにいう姿勢はとてもすがすがしかった。ほかにもまな板の上の鯉、正論を吐く (新書)なども、彼の考え方がよくわかるいい本。

2010年12月1日水曜日

「生命保険のカラクリ」を読んで

生命保険のカラクリ (文春新書)
生命保険のカラクリ (文春新書)


この本は,就職活動のときに電車の移動時間で読んでいたもの.この時は,さらっとしか読んでいなかっため,今回熟読することにした.
「岩瀬大輔」という名前を初めて知ったのは2年前。「ハーバード大学留学記」というブログを書籍化したものをたまたま本屋で発見し、読んでいたら「なんと情熱的ですがすがしい男なんだ」と尊敬して、そこから注目するようになった。在学中に司法試験に合格して,戦略コンサル畑,投資ファンドを歩んだ後,HBSのMBAで上位5パーセセントの成績で卒業という,エリート中のエリート街道を歩んだ著者.
しかし,ここからがすごい,複数の投資顧問会社の内定を蹴って生保ベンチャーの立ち上げに参入したのだ.あえて自らにリスクをとって,挑戦する試練の道を選択したのだ.企業は,経営戦略においてリスクをとることは,いざ個人のキャリアになると誰もリスクをとろうとしない.しかし,それを自ら体を張って体現しようという男なのだ.岩瀬さんが生保という業界を選んだ理由は以下の3つだそうだ.

①市場が非効率であること.
②市場が非常に巨大であること.
③市場が変革する波が訪れはじめてたこと.

加えて,日生で生保畑34年のMOF担当として,活躍してきた出口社長の「生命保険の共助の精神を再興する」という設立理念に賛同したことがなによりも大きいようだ.
印象の残った部分は,以下の通り.

付加保険料開示の衝撃

・典型的な死亡保険の付加保険料が3割から6とされている。証券仲介や投資信託商品を選ぶ際に必ず手数料が重要な比較対象の指標になるように、生命保険会社も付加保険料の低い会社を選ぶことが大切になるはずである。
生命保険業界において、この付加保険料部分を開示することは、タブーとされてきた。しかしながら、住宅ローンを購入するときも、投資信託の販売においても必ず手数料は開示される。なぜ生命保険業界だけが・・・。

保険料の自由化から新規参入

護送船団行政の特徴は、業態別組織を編成し、銀行局、証券局、保険部それぞれの業態で新規参入を認めないことによってつまり、つぶさないことで預金者、投資家、保険契約者を守ることであった。
・生命保険業界においては、大きな二つの障壁が競争を阻害してきた。ひとつは、参入障壁であり、もうひとつが保険料の許認可制度である。誰がゲームに参入するかも政府が決定して、重要なルールである商品の値段や料率も政府が決めるというものある
・資本主義のもとでは、自由市場下で競争が、行われることで、需用と供給のバランスによって価格が決定し、市場が効率化していく考え方があるはずである。
2008年には、ネット事業の生命保険会社の設立が相次いだ。われらがライフネット生命は、マネックス、三井物産、新生銀行、リクルート、セブンFGなどの異業種を株主に持つ。また、ネット金融グループSBIは、アクサ生命と合同でSBIアクサ生命を立ち上げ営業を開始している。


■米国で初めて加入した医療保険

・アメリカには公的な医療保険制度が存在しない医療保険は民間の保険会社によって提供されている。その結果、低所得者層を中心に、医療保険に加入していない人が約4000万人もいると言われ、大きな社会問題になっている。
・民間の病院は、経営の効率化を求めてキャッシフローの改善策として、保険加入者の治療費未払いをなくすよう、精力的に取り組む。その結果、基本的な権利である「医療を受ける権利」ですら保障されない人々が増えており、経済的な格差が助長されるようになってきた。
これに対し、我が国の公的な健康保険制度は、諸外国の中でも極めて手厚く整備されているものの一つと言える。空気のように存在しているため実感することがない。自己負担にも一定の基準が設けられている。


【まとめ】
日本の生命保険業界がいかに特有で,非効率な市場であったのかをよく理解できた.しかし,その市場規模は非常に巨大であり,「保険料を1%でも下げられれば,何千億円という金額を国民に還元できる」という筆者の熱い思いを感じることができた.マネックス証券の松本大さんにしろ,ライフネット生命の岩瀬大輔さんにしろ本当に優秀な人ほどリスクをとってチャレンジし,公のために資するのだと感じた.岩瀬さんの本は非常に情熱的でモチベーションアップに繋がる.これからも期待したい.こちらも132億円集めたビジネスプラン最近リリース.

2010年11月29日月曜日

「稲盛和夫の実学」を読んで

稲盛和夫の実学―経営と会計
稲盛和夫の実学―経営と会計

もともと小宮一慶さんの本をいろいろ読んでいたら、どうやら小宮さんは京セラの創業者の稲盛和夫さんの書籍にかなり影響を受けていることが分かった。そこで、アマゾンの中古で取り寄せてさっそく読んでみた。キャッシュフロー経営の本だとのうわさを聞いて、読んでみたが現場ベースに基づいたとても分かりやすい良い本だった。印象に残った部分は以下の通り。


■利益はどうなったのか?齋藤経理部長とのやりとり
・稲盛氏が工学部出身で会計の右も左もわからなかったころに、経理部長だった斉藤部長に「いったいこの資金繰りはどうなってるんじゃー!」とひとつひとつ質問攻めにして会計の本質を理解していったシーンが印象的。わからないことはわからないとはっきり主張してひとつひとつ理解していく姿勢はとてもすばらしいと感じた。

理系出身だった稲盛氏の独自の視点があったのかもしれない。かなり早い段階からキャッシュフロー経営の大切さを確信していた話がとても印象的。

■米国における監査の経験
・米国のシリコンバレーにおいてなんとしてでもセラミックを売りたいとの思いから、米国で事業展開した時の話。米国の担当の植村さんという公認会計士を紹介して頂いたその方から、こんな話をされたらしい。
・「監査をしている会計士に『このくらいはまけてくれよ、これぐらいいいではないか、堅こうな』というようなことを言う経営者がいる。経営者はフェアでなければならない。正しいことを正しくやれる経営者でなければ、監査をお引き受けできない。」」と厳しく突き放されたという話。創業間もないベンチャー企業において理科系出身の新入社員と稲盛氏2名で経理をやりくりしている姿を見てとにかく不安に思ったのだそうだ。


公認会計士と企業経営者の力関係やバランス感覚はとにかく大切なんだとうい話も良くわかる。依頼する経営者は、会計士をいいくるめてやろうという気持ちは絶対に持ってはいけないし、仕事をもらう側の会計士はどうしても力が弱くなりやすいから、正義感と強い意志が必要になる。この話を読んだ時、ライブドア監査人の告白の著者で知られる田中慎一氏を思い出した。会計士は人一倍の志が必要なのだろう。


■稲盛氏が松下幸之助氏の講演
・松下氏が「ダムをつくることで一位の水量で水が流れているように、ダムの蓄えを持って業を行わなければならない。」と述べると、聴衆のなかの一人が、「どうしたらそのような経営ができるのか」を質問した。松下氏は、「その答えは自分も知りません。そのような余裕のある経営をせな、あきまへんな。」と返した。
・聴衆がどっと笑うなかで、稲盛氏はこの言葉に深く感銘したという。こうして京セラの無借金経はスタートしたのだ。


同じ言葉でもそこから「ひらめく」ことができる人はとにかくすごいのだろう

【まとめ】
あくまで現場ベースを大切にしながら、経営と会計の本質を突き詰めていく姿勢に感銘を受けた。会計の話に限らず、専門家同士の会話ってどうも井の中の蛙になりやすい。本質を見失ってしまう。だから、一歩引いて初心者の気持ちなって、接することが大事なのだ。最後に「人のこころをベースに経営をする」ってあたり前できれいごとのように聞こえるけど、すごく大切なことだと思った。



2010年11月27日土曜日

ブログをスタート

読んだ本の感想や日々の雑感を記録していくことにする。せっかく本をたくさん読むんで形にすることにした。これから、読んだ本の感想や日々の雑感をつれづれなるままに書いていくぞい。